ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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で、石川昂弥は結局何本打てばポジれるのか?

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 心配されたPCR検査も無事全員が「陰性」と判定され、満を持して19日の開幕戦を迎えることになった。しかし忘れてはならないのは、一軍のナイターに先駆けて同日デーゲームで開幕する二軍のウエスタン・リーグである。

 急激な世代交代によりフレッシュな陣容が楽しめる現在の若竜。特に根尾昂、石川昂弥、岡林勇希の若手三銃士にはファンも並々ならぬ期待を抱いており、練習試合ではヒットを一本打つだけで平日の真昼間っからSNSが歓喜の声で埋まるほどだ(おまえら、仕事しろ)。

 なかでもドラフト1位の石川は注目度も別格。そうした期待に応えるかのように石川は現時点で3割を超える実戦打率を残しており、もはや大成するのが既定路線かのように語られることも少なくない。私も25年ほど中日ウォッチャーをやっているが、ここまで大器を予感させるルーキーは初めてお目にかかるかも知れない。強いて言えば2007年の堂上直倫フィーバーもこれに近かったが、それでも1年目のこの時期にバッティングが騒がれるようなことは無かったと記憶している。

 まさしく10年、いや20年に1人の金の卵を授かったドラゴンズには、必ずや石川を一流に育て上げなければならない義務がある。とは言ってもまずは体力作りをはじめ基礎を徹底的に叩き込むだろうから、1年目はどんなに好調でもシーズン終盤までは二軍でじっくり鍛えるものと思われる。

 それでは、石川は二軍でどの程度の成績を残せば及第点、あるいは合格と言えるのだろうか? 一軍なら3割とか20本といった分かりやすい線引きがあるが、二軍成績はいまいち掴みにくい。そこで今日は、高卒1年目の打者における、二軍でこれだけの成績を残せばポジってヨシ! というライン、通称「ポジライン」を考えてみたいと思う。

 

1.ホームラン数のポジライン

 

 石川昂弥に求めるもの。ファン100人に聞いたら100人が「ホームラン」と答えるはずだ。ナゴヤドーム開場以来、シーズン30ホーマーを達成した日本人選手は福留孝介、和田一浩のわずか2人だけ。しかも福留はルーキーイヤーから一軍でレギュラーを張った規格外の天才で、和田は実績十分の移籍選手だ。つまりドラゴンズはここ20数年間、生え抜きの野手をスラッガーと呼べる域にまで手に塩かけて「育てた」実績が皆無なのである。

 そんな折に現れたのが、あの世界の王貞治も惚れた石川というわけだ。早く一軍で見たい。早くナゴヤドームでホームランを量産する姿を見たい。しかし、まずはナゴヤ球場で打てるようにならなければ一軍で通用するはずもない。では、1年目の石川はとりあえず何本くらいのホームランが打てればポジるに値するのだろうか? 

 まずはこちらの表をご覧いただきたい。

 

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 これは1999年以降の過去21年間で、シーズン5本以上のホームランを記録したドラゴンズの選手の年度別一覧表である。1999年というのは、元々は狭かったナゴヤ球場のグラウンドサイズ、フェンスの高さがナゴヤドームと同じ規格に改修されたシーズンだ。

 ご覧の通り、シーズン2桁ホームランを記録したことがあるのは高橋光信、田上秀則、ショーゴー(森章剛)、中村公治、そしてモヤの5人のみ。このうち最多本数は、後にソフトバンクで活躍した田上が2003年に記録した13本となっている。ちなみにヤクルトの村上宗隆が1年目に打ったホームラン数は17本。筒香嘉智に至っては初年度から26ホーマーを放っている。イースタンに比べてウエスタンはホームランが出にくいとは言われているが、ここまで差があるのかとあらためて驚かされた。

 表に戻ると、高卒ルーキー(★マーク)は森岡良介、春田剛、高橋周平が打った7本が最多。言いかえればこの3人以外の高卒ルーキーは誰1人として5本以上を打てなかったことになる。平田良介も、福田永将もだ。高橋はこの年一軍でも41試合に出場して2ホーマーを打っているので、二軍に専念していればもっと多くの本数を打てた可能性は高いが、あくまで参考として「7本」が将来スラッガーになれるかどうかを見定めるうえでの目安だと言える。となれば、当然石川のポジラインは最低でも7本。できれば2桁を打って大いにポジらせて欲しいところだ。逆に4本以下に終わればネガティブにならざるを得ないので、なんとしてもここはクリアしてもらいたい。

 

2.OPSのポジライン

 

 次に着目したいのがOPS(出塁率+長打率)だ。この数字次第で、おおよその将来像が見通せると言われている。ちなみに過去15年間での3傑は清宮幸太郎、森友哉、村上宗隆。さすがと言うべき顔ぶれである。

 

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 彼らのようにOPS.800以上を1年目から残した選手は「大成が約束された選手」として別格のカテゴリに入るが、そうでなくてもスラッガータイプの選手は最低でもOPS.650〜699は残しておかなければ厳しいという現実がある。現在のセ・リーグを代表するスラッガーである鈴木誠也、山田哲人、岡本和真の3人も揃ってこの位置に登場。例外はOPS.580から7億円プレーヤーに上り詰めた浅村栄斗くらいだ。

 そうなると石川のポジラインは最低でもOPS.650〜699。練習試合では一試合に約1個は四球を選ぶなど選球眼の良さもアピールしているため、自ずと出塁率は伸びると思われる。打率やホームランだけではなく、こちらの数字にも注視していきたい。

 

3.三振率のポジライン

 

 最後に、成功を占う上で重要とされるのが三振だ。いくらホームランが多くても、バットに当たる確率が低いのでは一軍での通用は見込めない。たとえば根尾は昨年安打よりも遥かに多くの三振を喫し、.310という驚異の三振率を記録した。昨年は1年目ということもあって「土台作り」のフルスイングも見守ってもらえたが、今年も同じような内容なら一気に立場は悪くなるだろう。

 鈴木誠、山田哲は1年目から三振率を非常に低く抑え、コンタクト能力の高さを垣間見せた。一方で清宮、筒香といった根っからのホームラン・アーチストは大振りが多いためか三振率も高かったが、その分を補って余りあるほどホームランを量産。しかし、両者ともに一軍では粗が目立ち、筒香も入団5年目まではなかなか定着できずに苦労を経験した。

 鈴木誠と山田哲が比較的早い段階で台頭したことを考えても、やはり三振率が低い方が一軍では早く活躍できる可能性が高いようだ。石川には5年後などと悠長なことは言わず、来年にはレギュラーを取ってくれるようなビジョンを描いているので、今季のウエスタンでの三振率は要注目である。

 

結論

 

 以上の考察から石川昂弥のポジラインは、

「ホームラン7本以上、OPS.650〜.699以上、三振率.150以下」

 これが最低限の数値目標だと結論付けたいと思う。この願望にどれだけ近い成績を残してくれるのか? あるいは遥かに上回る成績を残すのか? いよいよ待ちに待った怪物のルーキーイヤーが幕を開ける! まあ明日の由宇、降水確率90パーセントだけどね!