ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

打てるエース誕生の予感

 いま一番いい女といえば池田エライザだが、一番アツイ野球選手は梅津晃大である。

 唸る豪速球、巧みな投球術。長身から伸びる長い手足の躍動感は、ダルビッシュのようでもあり、大谷翔平のようでもある。つまり近い将来エースに育つのは約束されたようなもの。こんな投手が出てくるのをずっと待っていたんだーー。開幕前最後の練習試合となった今日、それほどの期待を抱けるだけの投球を梅津は見せてくれたと思う。

 なんたって球が速いのがいい。この日の最速は3回に梶谷隆幸を見逃し三振に仕留めた152キロ。全85球のうち約6割にあたる52球がストレートで、その全てが145キロ以上を計測した。紛うことなき速球派。このあたりは柳裕也や、ツーシーム使いの大野雄大には無い魅力だ。2回からの5者連続三振も圧巻だった。決め球はストレート2、フォーク2、スライダー1。真っ直ぐ一辺倒ではなく、キレ味鋭い変化球でも勝負できる投球幅の広さ。

 ついこないだまで暗黒にどっぷり全身浸かっていた中日ファンが、こんなものを見せられて恍惚としないわけがない。テレビ越しに映る近未来のエースの姿に、私は思わずこう漏らした。「完璧だ……」。そしてそれは、20数年ぶりに心を奪われた瞬間でもあった。以前惚れた人の名は、川上憲伸。かつて竜の絶対的エースとして君臨した男と比肩できるだけの実力を、この背番号「28」は持っていると確信した。

 

打てるエース誕生の予感

 

 好投手なら今までもいた。だが梅津には華もある。エースと呼ばれる投手はいつの時代も程度の差はあれどチームに一人はいるが、スター性を併せ持つ投手はそうは現れない。特にセ・リーグでは、“バッティングもできる”ことが重要な条件だと思う。

 2回2死一、二塁。6球粘った末に梅津の放った打球がライト前へと抜けていった。外野陣が超前進守備を敷いていたため惜しくもライトゴロとなったが、その球足の速さはどう見たって投手が打つゴロではなかった。しかも全力で駆け抜け、ギリギリのタイミングでのアウト判定だ。この五体をフル活用した果敢な姿勢、めちゃくちゃ川上っぽいぞ。

 その川上と入れ替わるようにエースの座に着いた吉見一起は5年連続二桁勝利を収めるなど先代をも上回るほどの安定感を誇り、優勝にも2度貢献。しかしバッティングは大の苦手で通算安打23、本塁打は未だに1本も出ていない(通算OPS.183)。また開幕投手が内定している大野も打つ方はからっきしダメ(同.172)で、2016年から3年がかりで記録した80打席連続無安打はリーグ記録まであと4という不名誉なものだった。

 「打てるエース」の系譜は、川上(通算OPS.379)や更に遡って郭源治(同.339)、星野仙一(同.550)、権藤博(同.553)など脈々と受け継がれてきたドラゴンズの伝統でもある。こうした歴戦のツワモノを見てきた古参ファンにとって、ここ10年ほどの投手陣のバッティングは意外性がなく面白味に欠けると言わざるを得ない。

 近ごろセ・リーグにもDH制度の導入をという声が高まっているが、そんなもんいらんわと言い張れるくらいの活躍を梅津には期待したいところだ。

 

かつてないペナントレースへ

 

 そんなわけで練習試合もこれにて終了。ナゴヤドームに帰ってきた途端に勝てなくなったのは少し心配だが、ラスト2戦で山本拓実、梅津の若き2人が結果を残せたのは大いなる光明といえよう。与田監督は2週間の調整期間を「大きなケガ人が出なかったことが一番」と総括した。

 不安は尽きない。選手全員が受けたPCR検査の結果もどうなるか分からない。そもそも120試合をフル消化できるのかどうかも怪しい部分はある。かつてない状況の下で開幕する2020年度ペナントレース。日本に勇気と元気を与える意味でも、プロ野球が大規模イベント再開の先陣を切る意味は非常に重いものがある。とは言え全ては健康あってのこと。ひとまず6月19日に選手、スタッフ全員が元気に球場入りできますように……。

 あ、でも岡田はもうちょっと何とかしよう。

 

△2-2DeNA