ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

喜哀楽の大野

 ちょっとSNSを覗けば、出るわ出るわ、中日ファンの心配の声。「打たれ過ぎ」「一体どうしたんだ」「朝倉の幻でも見えたのか」等々。

 ちょうど1週間後の開幕戦で大役を務めるエース大野雄大が、開幕前最後の調整登板となったDeNA戦で炎上を喫した。5回11安打6失点。まるでバッティング練習のように次々と安打を許す姿を見れば、心配するなと言う方がムリな話だ。四死球0だからテンポが悪いわけではない。むしろ良すぎるくらいだ。それが打者から見れば淡白に映り、間を取りやすくさせているのだろうか。

 原因はそれだけではない。終始、高めに浮く決め球。狙いすまされたかのように弾き返されるストレート……。本人は至って冷静に「ボール自体はしっかり投げられているので問題はない」と手応えを強調するが、とてもじゃないがあと1週間で万全に調整できるとは思えない。いっそのこと朝倉に見てもらった方が良いのでは、なんて考えまで頭に浮かぶわけだが、開幕までの調整でカギを握るのは技術や体調よりも、大野の場合は“メンタル”だと思う。

 

感情に左右されるタイプ

 

 メンタル。お前はデニー友利か、とツッコミを入れて欲しいわけではない。投手には2タイプあって、1つは感情を抑制して投げるタイプ。菅野智之や涌井秀章、昔なら野茂英雄といったパワプロなら「ポーカーフェイス」が付く投手達だ。そしてもう1つが感情を剥き出しにして投げるタイプ。系譜的に明大出身者にはこのタイプが多い。星野仙一、川上憲伸、あと武田一浩に至ってはグラブをベンチに投げつけるだけでは飽き足らず、契約更改後の会見席でセカンドバッグを叩きつけたこともあった。武田ほどではないが、大野もどちらかも言えばこちらのタイプに該当するのではと思う。

 もちろん根が優しい大野は“怒”の感情を露わにすることは無いが、嬉しいときには“喜”と“楽”を大げさなほど爆発させる。昨季のノーヒットノーラン達成時のはしゃぎっぷりが分かりやすい。逆に打たれると、“哀”の表情が浮かぶ。「あちゃー」と天を仰いで打球の飛んだ方向を振り返るのがそれだ。このタイプは、良いときはとことん良くても、悪いときはドツボにはまるのがネックである。

 今さら蒸し返すのもどうかと思うが、3年前のキャンプで当時のコーチ(誰とは言わないが)と衝突。その後の2年間で7勝(11敗)しかできなかったのは、メンタルの落ち込みが要因と言われている。ところが与田監督の就任に伴い首脳陣が一新されると、監督から直々に励ましを受けたことで自信が回復。昨季は最優秀防御率のタイトルを獲得する活躍で見事にエース返り咲きを果たした。

 この手の感情に左右されやすいタイプは、とにかくノせておくに尽きる。今日の試合後、与田監督は「あの投げっぷりが一番安心材料。一つ一つの結果に右往左往することはないと思います。安心して任せられるのではないかと思っています」(「中スポ」ドラゴンズ情報)と揺るぎない信頼を口にしたそうで、大野の性格をよく理解していることがうかがえるコメントである。

 おそらく今年はFA取得年とあって、プレッシャーを感じている部分もあるのだろう。今日も「問題ない」と言いながら、ロペスに先制打を食らった瞬間にはいつもの“哀”の表情が出てしまっていた。残り1週間で“喜” “楽”をどこまで引き出せるか。カギはメンタル……えなこにでも激励コメントを送ってもらえば一発なのだが。

 

練習試合●4-8DeNA