ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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風と共に吉見

 気づけば最近の音楽が全然分からなくなっていた。キングヌー、ヒゲダン、あいみょんくらいは分かるが、サブスクのランキングページに出てくる大半の人気曲は、アーティスト名からしてちんぷんかんぷんだ。YOASOBI? TWICE? yama? Rin音? ダメ、分からない。バンドなのかソロなのか、男なのか女なのかも不明。

 20数年前、L'Arc-en-CielやDragon Ashが分からないダセェオッサンにはなるまいと固く決心したはずなのに、結局30過ぎたら自分もダセェ側に仲間入りだ。正直、今さら聴くのも億劫だし、たぶんこれからも18歳くらいまでに親しんだ思い出の曲を聴き続けて年老いていくのだろう。あ、でも瑛人。お前のクソダセェ曲だけは100均でエンリピで流れてて気が狂いそうになったからイヤでも認識してるよ。あと藤井風。斎藤工みたいな風貌でピアノの天才で超センスあって英語ペラペラとか、「何なんw」。

 

形も中身も変えたニュー吉見

 

 風といえば風速17メートルの猛風が吹き荒れた今日の関東。ただでさえ風の強いZOZOマリンスタジアム。強行したのも不思議なくらいの条件の下、どれだけ荒れた展開になるかと心配していたのだが、意外にも試合は両者譲らずの投手戦と相成った。

 中日の先発は吉見一起。かつてのエースも今や「ナゴヤドーム専」と揶揄されるなど窮地に立たされている。昨季はビジターに2試合登板し、いずれも序盤でノックアウト降板。結局7月3日の東京ドームでの巨人戦で2回7安打4失点と滅多打ちにされたのを最後に、二度と一軍に呼ばれることなく14年目のシーズンを終えた。

 もうあとがない今季。吉見はまず、長年慣れ親しんだ投球フォームを捨てるところから復活への第一歩を踏み出した。腕から始動する新フォームは、有名トレーナー鴻江寿治氏が主宰する「コウノエスポーツアカデミー」のトレーニングキャンプで構築。同時にプレートの踏む位置を、三塁側から一塁側に変えた。さらに“形”だけではなく“中身”の変化にも着手。投球回転数などを測定する精密機器「ラプソード」の結果をもとに、自身の特徴であるシュート成分の強い変化球を左打者の懐からえぐるようにストライクゾーンへ曲げる、いわゆる「フロントドア」を習得した。

 前回4日のヤクルト戦ではこの“新必殺技”で見逃し三振も奪うなど、出来は上々。だがローテ投手の一角に食い込むつもりであれば、ナゴヤドームでの登板を優先するとか、投げるたびに抹消するといった特別扱いはもう許されない。その意味では前回登板から中6日、悪条件下のビジターという今日の環境は、現状の吉見が開幕ローテに入って然るべき投手なのかどうかを測る上で、うってつけと言えよう。

 

新しさとオーソドックスの融合

 

 帽子が飛ばされるほどの強風に煽られながら、吉見は昨秋から試してきたことを確かめるように、高低を広く使う投球で立ち上がりを難なく抑えた。白眉は2回だ。簡単に2死を取った後に、連打を許して一、三塁。ここでバッター藤岡裕大に対して見せた投球こそがまさしく“ニュー吉見”を感じさせる内容だった。まず初球、いわゆる「フロントドア」でストライクを取ると、カウント2-2となって7球目、フィニッシュもやはり「フロントドア」。胸元から急変化するシュートに打者は手が出ず、最初のピンチを切り抜けた。

 続く3回も2死満塁と苦しい場面を迎えたが、今度は右打者の井上晴哉に対して終始外角を攻め、最後は低めのスライダーで空振りを奪うという、こちらはいかにも吉見らしいオーソドックスな配球。この辺りは新しさとオーソドックスを融合させた、ベテランらしい引き出しの多さで翻弄してみせた。

 吉見は昨季までほとんどの場合においてシュートをカウントを取るためのボールとして使っており、2ストライクからの勝負球はストレートとスライダーにほぼ偏っていた。またコース別被打率を見ると左打者に対して最も多く投げたのは外角の真ん中から低め。スライダーを使った「バックドア」と、コーナーを突く制球力に頼っていたことが分かる。打者としても吉見といえばその攻め方のイメージが定着しているから、ふいに胸元を突くボールが来ると、4日の坂口智隆のように避けるような反応になってしまうのだろう。

 35歳になっても最新トレンドを取り入れる吉見の飽くなき向上心には恐れ入る。開幕ローテは実力でつかみ取った。なりふりかまわず復活に期した男の今シーズンがいよいよ始まる。

 

練習試合●0-1ロッテ(8回コールド)

 

【参考資料】

「吉見一起と菅野智之の新フォームに共通する「横と縦のトルク」」(中日スポーツ)

「何なんw」藤井風/UNIVERSAL MUSIC LLC