ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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まゆゆ26歳、井領30歳、それぞれの岐路

 まゆゆ、引退するってよ。

 全盛期のAKB48を引っ張った「神7」のひとり、「まゆゆ」こと渡辺麻友が先日、芸能界の引退を表明した。ついこないだまで朝ドラに出演していただけに、突然の発表は多くのファンに衝撃を与え、スポーツ各紙も大きく取り上げた。休養ではなく引退という重い決断を下した裏には相当な覚悟があったのだと思う。

 根が真面目なのだろう。スキャンダルらしいスキャンダルも一切なく、週刊誌記者も「あの子はホントに何もない」とお手上げだったという。グループ脱退時には「恋愛禁止」の掟を守り通したことを明かしていた。長い芸能史上においても類をみない本物の“ザ・アイドル”だったと評しても決して大袈裟ではなかろう。もっとも個人的に当時はももクロ(の何色かは敢えて書かないが)を猛烈に推していたのでAKBの握手会には行かずじまいだったが、人気絶頂時、背中に大きなゼンマイを付けた衣装で「シンクロときめき」を歌う姿がクラクラするほど眩しかったのを思い出す。

 そんなまゆゆも、もう26歳だという。総選挙で念願の1位に輝いたのが早6年前。そりゃ、いつまでも「まゆゆ」じゃいられないわけだ。25歳を過ぎると、同世代でも色々な面で境遇の違いが目立ち始める。結婚、子育て、役職……生々しいけど預貯金額に差が出るのも、ちょうどこの辺りだ。いわば人生の分岐点。進むべき道を選ぶのは、本人しかいない。

 

分岐点の井領

 

 中澤裕子がおばさんキャラで売っていた時代に比べればアイドルの寿命は飛躍的に伸びた。今をときめく白石麻衣も26歳。まいやんだって昔の「うたばん」ならバシタカと中居くんにセクハラまがいのババア扱いを散々受けていたことだろう。時代は変わった。とは言え、やっぱり25歳を過ぎてアイドル呼びはちょっと違和感がある。野球でいえば30歳を若手のカテゴリにねじ込むようなものだ。

 30歳。というわけで話はいきなり井領雅貴に飛ぶ。かの有名な落合ドラフトで2015年に入団した井領は、走攻守ともに社会人トップクラスとの呼び声でバリバリの即戦力として期待された。が、入団3年目までの通算安打はわずか13本。4年目の2018年は一軍出場なしに終わり、満場一致で整理対象選手に名を連ねた。球団が球団ならこの時点で解雇されていただろう。ところがドン底をさまよっていた中日は、わずかでも覚醒の可能性がある井領を残した。そして新任の与田監督に見出された井領は、昨季キャリア最多の55試合出場を果たしたのである。

 代打中心で打率.290、OPS.711なら申し分ない。怪我で途中離脱したのはもったいなかったが、井領は戦力外の最有力候補から一転して貴重なサブの役割をゲット。阿部寿樹ほどではないが、昨年一気に飛躍した選手のひとりだ。そうなると、今シーズンがめちゃくちゃ大事になってくる。結果を残さなければ再び戦力外がちらつくし、逆に大ブレークする可能性だってある。今季は井領にとって岐路になるシーズンだ。

 

打ち直しのバッターボックスへ

 

 たぶんドラゴンズにさほど詳しくない他球団のファンからすれば、井領はまだ若手のイメージなのではないだろうか。藤井淳志がそこそこの年齢になるまで若手扱いされたように、社会人出身のオールドルーキーはキャリアの感覚が掴みにくい。

 でも実際は30歳。アイドルが25歳でひとつの節目を迎えるように、プロ野球選手にとって30歳は「若さ」に別れを告げる年齢だ。正直、ここからレギュラーを狙うのはちょっとツライ。ならば代打稼業で生きていくか。渡邉博幸のようにスーパーサブに徹するか。いずれにせよ、若さでごまかせなくなる分、何かしらの方向性を示さなくてはならない。

 じゃあ井領の生きる道は何かといえば、やはりバッティング。これに尽きるだろう。いつでも外野に打球を飛ばせるパンチ力はある。チームとしても手薄な代打枠に渡辺勝か井領が収まってくれれば心強い。

 今日の9回、惜しくもファウルになった1打席目の大飛球を打ち直すかのような2打席目のホームランは、30歳らしいワザありの一打だった。人生の分岐点、まゆゆは引退を選んだ。でも井領はまだ辞めるには早すぎる。30歳。一度は人生凡退しかけた男が今、打ち直しのバッターボックスに入る。

 

練習試合○5-4ヤクルト