ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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郡司たまらん問題

 いやあ、たまらんたまらん。何がそんなにたまらんって、暑さもたまらんけど郡司たまらん。リードはさる事ながら、バッティングがホントにたまらん。え? 今日はいいとこ無かったって? たしかに結果だけ見れば3タコだが、それでも郡司の持ち味は十二分に発揮されたと思う。

 まず第1打席は簡単にツーナッシングとされながら、7球粘って空振り三振。第2打席こそ4球で見逃し三振に倒れたが、第3打席は9球目の低めの真っ直ぐを捉えてのライナーである。3打席の合計被投球数は20球。ただでは倒れない粘りを今日もしっかり見せてくれた。

 

指標的にも“粘り”は本物

 

 選球眼が郡司の持ち味であることはオープン戦の早い段階から話題になっていた。3月20日の広島との練習試合で、フルカウントから大瀬良大地が投げ込んだ際どいコースを自信満々に見送って四球を選んだシーンはその象徴といえよう。それだけでも8番打者としては大きな強みになるのだが、郡司は加えてファウルで粘る技術も卓越したものを持っているから「たまらん」のだ。

 「P/PA」という指標がある。「Pitch per Plate Appearances」、要するに「打者1打席あたりの平均投球数」を示す指標だ。早打ちの巧打者など様々なタイプがいるので一概には言えないが、単純に考えればこの数値が高ければ高いほど投手が打ち取るのに苦労する(=めんどくさい)打者ということになる。同じ凡退でも3球足らずで打ち取れるのと、5球投げてようやく打ち取れるのとでは心身の疲弊は後者の方が断然大きい。

 ちなみに昨シーズン、12球団で最もP/PAが優れていたのは近藤健介(日ハム)の4.58だ。つまり近藤は打つにせよ凡退するにせよ四球を選ぶにせよ、1打席に平均4.58球を投手に投げさせたわけだ。さすがはプロ通算出塁率4割超の達人である。続いて同じく日ハムの西川遥輝が4.46で2位。次点で4.34の浅村栄斗(楽天)とパ・リーグ勢が占める。ここまではある意味イメージ通りだが、4位に意外な打者が登場する。セ・リーグではトップとなる4.32を記録した村上宗隆(ヤクルト)である。一見ホームラン狙いの雑なバッティングをしているようで、実は誰よりも慎重にボールを見極め、そして安易に手を出さない打者だということが分かる。つくづく末恐ろしいモンスターだ。

 

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 4.00を超えれば優秀といわれるこの指標。昨季ドラゴンズでこの基準をクリアしたのは4.07の大島洋平、4.05の堂上直倫の2人だけ。よく早打ちが槍玉にあがる京田陽太は3.87で、ビシエド(3.72)、高橋周平(3.80)よりも上なのは意外か。なお100打席以上立った打者の中で最低が加藤匠馬の3.41。長打力が無いのだから、せめて淡白さは改善して欲しいところだ。

 では本日の主役・郡司の話に戻ろう。2月22日からのオープン戦、3月20日からの練習試合を通じて、郡司は一軍の実戦で34打席に立った。分母が少ないのであくまで参考ではあるが、今日の試合を終えた時点でのP/PAは4.67。なんと昨季トップの日ハム近藤を上回る割合で多くの球数を投げさせていることになる。ちなみにこの指標、毎年似たような顔ぶれが上位に並ぶことからも、偶然や確変の要素が少ない打者本来の特性を測る指標として信頼性が高いと言えそうだ。

 

 ただでさえ過酷な捕手というポジションを新人がこなすのは相当な負荷がかかるのは間違いない。それゆえ六大学で三冠王に輝いた打棒もしばらくは鳴りを潜めるかもしれないが、たとえヒットは出ずとも自動アウトといわれる下位打線に粘れる打者がいれば、着実に相手にダメージを与えることができる。しかもその非凡さは、球界最高クラスの近藤に肩を並べる可能性さえあるというのだ。これはもう、たまらん以外の何ものでもなかろう。

 3タコ? でも20球投げさせた。郡司たまらん!

 

練習試合△2-2ヤクルト

データ出典・@aozora_nico2さん