ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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起死回生! 根尾の一打

 速報アプリ頼みの映像なき戦い。ファンのボルテージが最高潮に達したのは、土壇場の9回裏だった。1点ビハインドで迎えたこの回は先頭でヒットの井領雅貴と四球の石川駿を塁に置いて1死一、二塁。打席には、こういう場面でことごとくファンに溜息を吐かせてきた根尾昂だ。

 7回裏に代走で出場した根尾にとって、もちろんこの日の初打席。3月3日の西武戦以来当たりが止まっており、前の試合でも2三振を喫するなど調子は決して良くない。それでいて試合を左右する重要な場面とくれば、正直言って限りなく期待値は低かった。

 だからアプリの画面が切り替わり、「右二塁打 +1点」の文字が目に飛び込んできた瞬間は公式戦さながら飛び上がって喜んでしまった。この記事を書いている時点でまだ映像は入ってきていないが、アプリによれば内角高めの浮いたフォークをライト方向に運んだそうだ。起死回生、値千金の同点打。それが右中間なのか、ライト線なのかは分からないが、いずれにしても“ここぞの場面”できっちり結果を残せたことは大いに評価できよう。

 何しろこの手の勝負所にとことん弱いのが長年のドラゴンズの課題である。サッカー日本代表も昔っから決定力不足と言われ続けているが、ドラゴンズも負けちゃいない。この日も4回に無死二塁のチャンスを棒に振ると、5回の2死二、三塁も福田永将が中飛に、さらに7回の2死満塁もやはり福田が三邪飛に倒れ、再三のチャンスであと1本が出ずに苦しい展開になってしまった。言いかえればあと1本がどこかで一度でも出れば一気に楽な展開になるのだが、とにかくこのチームはそれが出ない。

 時を同じくして広島に5点差を付けられたソフトバンクがあれよあれよと追いつき、追い越したのを知ると、なぜそんなに勝負強いのかをお聞かせ願いたい衝動に駆られた。やはり圧倒的にドラゴンズに足りないのは“ここぞ”で打てる勝負強い打者なのだ。昨季リーグ最高のチーム打率を記録しながら得点はリーグ5位というチグハグ加減も「さもありなん」といったところか。

 

 

失投を逃さないことが大事

 

 根尾がまだ物足りないのは前回の記事で書いたとおり。今日はたまたまアコスタの失投を捕らえることができたが、失投の少ない一流投手にかかれば根尾攻略など赤子の手をひねるも同然。例えば菅野智之と対戦するとして、9割がた三振する姿しか思い浮かばないのが現状である。

 ただ、菅野の放る球など根尾じゃなくても容易には打てないので参考にはなるまいか。それより大切なのは失投を一発で仕留めたこと。今日のようにしっかり逃さずに打てるのであれば、少々の粗には目をつむりたくなるものだ。

 当落線上でふらついていた根尾だが、この1打で間違いなく首脳陣の評価も回復し、次のチャンスが与えられるだろう。なんでもない場面で打つヒットと、“ここぞの場面”で打つヒットとでは後者の方が遥かに深く印象に残る。

 オープン戦後、本来組まれていた公式戦を練習試合という名目で実施するという。1ヶ月延びた開幕戦を迎えるころ、根尾は何本の“ここぞの場面”のヒットを積み重ねているだろう。たかが1本、されど1本。他の誰もが打てなかった1本を打った根尾が間違いなく今日のヒーローだ。