ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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郡司と心中する覚悟

 開幕投手が確定している大野雄大が、どうもピリッとしない。ピリッとしない程度なら良いのだが、控えめに言って擁護のしようもない出来だからファンも不安になってくる。楽天打線が振れているのも多少はあるにせよ、大野の投球内容も大概ヒドい。生命線のストレートは高めに浮き、スライダーは投げた瞬間それと分かるすっぽ抜け。ボール先行からストライクを取りに行ったところを痛打されるという、おおよそ昨季の最優秀防御率ピッチャーとは思えない投球をオープン戦が始まってからずっと続けているのだ。

 強いて言うなら、3度の登板ですべて異なる捕手と組んでいるのは大野にも同情の余地があるかも知れない。23日のDeNA戦が大野奨太(3回3失点)、1日の広島戦が木下拓哉(2回1失点)、そして今日が郡司裕也と木下(4回7失点)。タイプの違う捕手と試合ごとに呼吸を合わせなければならず、また前回登板の反省をバッテリー共同で生かせないのも良くない。

 捕手とは「女房役」というように、投手のことなら言葉を交わさずとも目を見れば全てが理解できるくらいの存在であるべきだ。まるで熟年夫婦のように「ツー」と言えば「カー」と答える、そんな関係が理想だと思う。

 ところが今のドラゴンズはどうだ。帰宅するたびに違う女房が待っているのも最初は新鮮かも知れないが、同じやり取りを色んな女房とするのは億劫に違いない。ましてや新人の郡司がマスクとなれば、加藤匠馬や木下が言わずとも分かっているような大野の基本的な取り扱い方みたいなものも、一から教えてやらねばならない。

 例えば今日のように制球もままならない日の大野はどんなリードをすれば持ち直すのか。当然新人には分かるはずもなく、2回以降も初回と同じようなパターンで失点を重ねてしまった。やはり「あれ頂戴」と言えば自動的にウスターソースを持ってきてくれるような、そんな古女房が投手には必要なのだ。強いチームには確固たる正捕手がいるという球界の定説も、きっとそういう理由からなのだと思う。

 

 

FA年、大野は自立できるか

 

 ……などと大野の擁護のようなことを書いてみたものの、やっぱりあれだけ打ち込まれるのはどう考えても大野に問題がありそうだ。4回には昨季4度バッテリーを組んだ木下に代わっても調子が戻らずダメ押しの1点を失った。

 となれば残るは昨季25登板中21度組んだ加藤しかいないが、今後郡司、石橋康太を育てていこうというチーム方針のなかでエースの大野だけを加藤と組ませ続けるわけにもいかないし、そもそもFA移籍を視野に入れている投手が「加藤としか組めません」では話にならない。“捕手が誰であれ自立した投球ができるか”が大野にとって色々な意味での課題になってきそうだ。

 

開幕マスクは郡司? 木下?

 

 2試合連続の先発マスク、それも大野とのバッテリーとなれば2週間後の開幕戦を見据えていないと言う方がウソだろう。昨日放送の「ドラ魂キング」(CBCラジオ)で若狭アナは「明日のスタメンマスクが開幕のキャッチャー。99.9パーセント」と断言したが、その結果は若狭アナが予想した木下ではなく郡司だった。

 しかしその郡司は大野を炎上させ、4回で木下に交代。やはり開幕は木下なのか? そう思ったのも束の間、木下に代わっても相変わらずグダグダの大野。そしてバッティングでは1安打1四球の郡司に軍配が上がった。2打席ともフルカウントからの出塁。特に2打席目は外角低めのチェンジアップを我慢し、打つだけではない選球眼の良さを見せてくれた。ちなみに木下は空振三振と二ゴロの2タコだから、内容・結果ともに言うまでもなく郡司の完勝である。

 ただ、大学時代から指摘されていたように郡司はキャッチング面で課題が多く、今日もクサいコースをことごとくボールと判定されたことで大野のリズムが崩れてしまった。いざペナントレースが始まればもっとたくさんの失敗を犯し、当然「郡司のせいで負けた」という試合も出てくるだろう。

 そうなればファンや評論家からは2軍で実戦経験を積ませろだとか、あいつを使え、こいつを使えと様々な声が飛び交うのが目に浮かぶが(すでに言い始めている早漏もいる)、もしその程度の批判で正捕手を外すようであれば今すぐ2軍に塩漬けしてじっくり育成すべきだと思う。立浪和義や福留孝介、また捕手でいえば阿部慎之助がそうであったように、首脳陣がどこまで郡司と心中する覚悟を持てるかどうか

 類まれなるバッティングセンスとリーダーシップを兼ね備えたこの新人捕手を生かすも殺すも、首脳陣の覚悟次第である。