ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

4番阿部にみた、意図を感じる起用

 北谷球場でおこなわれたDeNAとの練習試合、注目すべきはその打順だ。2番高橋周平、3番にビシエド、そして4番に座ったのは阿部寿樹である。長打力が魅力とはいえ、昨季7本塁打の選手がビシエドを差し置いて4番に座るのは少し違和感があるが、実はこれは与田剛監督が前々から温めていたプランでもある。

 今年1月3日放送の新年特番「新春! ドラゴンズ亭2020」の監督インタビューで、与田は「2020年は4番を打て」と阿部に伝えたと明かした。責任感の強いビシエドは、体調もおもわしくない中でプレッシャーを背負うこともあった。そこを少し緩和させるためにも、我こそはという他の選手に出てきてもらいたい。昨年、ほぼレギュラー的な役割を果たした阿部には十分その資格はある--。

 与田は、阿部に4番を期待する理由をこう説明した。それに応えるかのように、阿部もこのキャンプでは「遠くに飛ばす」ことを意識したバッティングを練習でも実戦でも見せてくれている。昨年までは出番を掴むために、とにかく目の前の試合で結果を残すことだけを考えなければならない立場だったが、実績を残したうえで臨む今年は、すぐに結果が出なくても自分自身が描く理想に向かって練習ができるようになった。レギュラーの特権である。

 今日の試合では3タコに倒れたが、目指している方向性は間違っていない。4番阿部、しばらく続けてみる価値はあると思う。

 

 

起用に込められた意図

 

 部下に何らかのメッセージを伝えたいとき、その伝え方は十人十色だ。理詰めで叩き込む野村克也のような上司もいれば、謎かけのような言葉で選手自身に考えさせる落合博満のような上司もいる。時には手を出すことも厭わない星野仙一タイプも、賛否はあるにせよ一つの方法だろう。

 では与田はどのタイプに属するのか。大野雄大を復活させたエピソードを聞く限り、選手に寄り添って自信をもたせる素質に長けているようだが、このキャンプに関して与田は、実戦での打順をはじめとした起用法に各々へのメッセージを込めているように感じる。

 たとえば一軍、二軍問わず「1番ショート」が定位置になっている根尾昂の打順からは、まさしく1番を打つようなタイプを目指せというメッセージを汲み取れるし、遠藤一星の「4番」という打順は、守備要因としてだけではなく、打撃も磨いて代打の切り札や、なんならレギュラーを貪欲に目指せ! という強烈なゲキに思える。

 他にも三ツ俣、石川駿らを競わせたり、捕手陣を平等に使って対抗心を煽ったり。キーマンに吉見一起と山井大介の両ベテランをあげたのも、意図的なものだろう。

 よくキャンプのことを「生き残りを懸けたサバイバル」と形容するが、正直言って例年の中日のキャンプは和気藹々と楽しそうに練習している姿が目立ち、あまりサバイバル感が伝わってこなかった。

 しかし今年は目の色が違う。昨年、鳴かず飛ばずだった加藤匠馬が一気に昇進し、一軍半だった阿部に至っては規定打席に到達した。「やれば使ってもらえる」。そんな意識が随分と浸透したのではないだろうか。このキャンプでは各々が明確に目標を持ち、必死に“サバイバル”しているのがよく分かる。

 漠然と練習させるのではなく、意図を伝えて意味のある練習をさせる。与田政権の思惑は、見事にハマっているようだ。