ちうにちを考える

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見えた?石川昂弥の課題

 

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 読谷球場でおこなわれた二軍練習試合のDeNA戦。注目の石川昂弥は「6番サード」でスタメンフル出場したが、4打席無安打1四球だった。守備では8回、飛雄馬の三塁線へのゴロを好捕し、一塁へノーバウンドで正確に送球。安定感のある守備をみせ、スタンドから拍手が起こった。

 7日の沖縄電力戦では2打席目にタイムリー二塁打を放つ華々しいデビューを飾った石川だが、今日は快音響かず。それでも非凡な才能を感じさせたのが、第2打席に選んだ四球だ。無死一塁で回ってきたこの打席、初球は中途半端なスイングが空振りとなり1ストライク。2球目は真っ直ぐを見逃して早くも2ストライク。しかしここから冷静に4球連続で見極め、カウント0-2から四球をもぎ取った。

 驚くべきは2-2からの5球目だ。阪口晧亮が投じたのは明らかに空振りを取るための落ちる球。打ち気に逸る打者がつい手を出してしまう姿をこれまで何千回と見てきたが、なんと石川はピクリともせず、これを悠々と見送ったのである。

 経験豊かな10年選手でも落ちる球を見極めるのは至難の技。だが1月の視力検査で軒並み超人級の数値を叩き出した石川の“目”は、ストライクゾーンから外れていくボールの軌道をはっきりと捉えていたのだ。安打は出ずとも、いちいちずば抜けたセンスを感じさせてくれるから石川はたまらない。

 

ところでこの5球目。fj4が二塁を狙って盗塁失敗したのは何だったんだ

前の回に福谷-郡司の慶應大バッテリーが実現しただろ。それに嫉妬して「俺も筑波だ! 」とアピールしたくなったんだろ。誰も見てなかったけど

 

 

見えた? 石川昂弥の課題

 

 試合に出るたびに良い面ばかりがクローズアップされる石川。しかし2試合6打席の内容から、現時点での課題も見えてきたので指摘してみたい。

 かねがね石川について「鈴木誠也や岡本和真のような打者に成長して欲しい」との意見をよく見聞きする。右打者でスラッガー体型という共通点から、成長のイメージを重ねやすいのだろう。2人ともセ・リーグを代表する4番打者で、最終的に3割30本ないしそれに近い数字を残す文句なしのスラッガーだが、実は打席でのアプローチはかなり異なる。

 鈴木の武器はなんといってもその選球眼だ。読んで字のごとくボール球を見極めた確率を示すボールゾーン見極め率を見ると、鈴木は12球団で最も優秀な85.68%を記録していた。選球眼の良いイメージのある丸佳浩が82.21%(9位)なので、いかに鈴木の眼力が卓越しているかが伝わるはずだ。また鈴木はストライクゾーン空振り率5.44%(17位)と一定以上のコンタクト能力も有している。西川遥輝や近藤健介といったアベレージヒッターに近い特性を持ちながら、30発打てる長打力も備えた極めて手強い打者である。

 一方、岡本のボールゾーン見極め率は74.10%(37位)と規定到達者60人のなかでは下位に位置する。ちなみに選球眼の悪さがよく問題になる京田陽太は71.50%(49位)だ。ストライク空振り率12.57%はバレンティン、村上宗隆、浅村栄斗、松田宣浩に次いで高い数字で、鈴木の倍以上。つまり鈴木に比べれば「ボール球に釣られやすく」、なおかつ「ストライクゾーンでも空振りが狙えやすい」打者だと言える。むしろそれで31発打てるのだから、芯を食った時のパワーは恐ろしいものがある。

 それでは石川はどちらのタイプに近いのか。高校時代は全国制覇した昨年春のセンバツ大会で6試合24打席に立って三振はゼロ、高校通算でも公式戦での三振率は驚異の.083と選球眼が優れているのは有名。また7日と今日で2試合6打席に立ち、合計24球のうち空振りは2回。ストライクゾーンの空振りは、目測ではあるが1回で、ファウルが5球あった。これらの内容だけ見れば、似ているのは間違いなく岡本ではなく鈴木だ。

 ただ、現時点ではこのコンタクト能力の高さが成績を残す上で障害になるかもしれない。実はこの2試合、石川は全打席でファーストストライクに手を出していた。結果はファウル2、安打1、ゴロ1、フライ1、空振り1。いつでも四球を狙える選球眼を持っていながら、早いカウントから打ちに行く積極性は少しもったいないようにも思う。

 また、なまじコンタクト能力が高いせいで、振ればバットに当たってしまうのも問題だ。「バットを振らなきゃ何も起こらない」とは英智の名言だが、現時点で技術、パワー共にまだまだ発展途上にある石川は、バットに当たってもファウルか凡打になる確率が高く、結果的に「早打ちの凡退」が増えてしまうのだ。

 昨年、根尾昂が「振りまくって当たらない」姿を散々見せてくれたが、今年の石川は「早打ちの凡退」がおなじみになるかも知れない。そこを乗り越えて鈴木に近づくには、選球眼を生かしてボールをよく見極める事と、技術とパワーを磨いて安打ないしホームランが高確率で打てるようになる事。後者はともかく、前者は意識次第で実践できることだ。

 次の試合予定は17日のDeNA戦。引き続き打席の内容にこだわって注視していきたい。

 

【参考資料】

データで楽しむプロ野球