ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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もう吉見を優遇すべき理由はない

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 吉見一起が9日、北谷球場で行われた実戦形式のシート打撃に登板。打者8人に対して被安打5、三ツ俣大樹には本塁打も許すなど派手に打ち込まれた。

 5本中4本が長打で、根尾昂にも気持ちよくスリーベースを献上した姿を見て心配になる気持ちも分からなくはないが、昨日も書いたとおり、この時期の内容、結果はあくまで参考程度に考えるべきだ。ましてやシート打撃での投球内容など、いちいち気にしていたら1年間身が持たない。どちらかといえば打たれた吉見を心配するよりも、打った根尾や三ツ俣のことをポジり倒した方がハッピーな応援ライフを過ごせるだろう

 

フォームも意識も変えた

 

 最後に二桁勝利を記録したのはもう8年も前のこと。ここ7シーズンは計19勝。昨季は5度の先発登板機会を与えられながら、わずか1勝に終わった。投球回数19.2、防御率6.41では然もありなん。平均して4イニングも持たない時点で、先発投手としては失格の烙印を押されても文句は言えまい。

 5年前に右肘を手術してからは、それといった故障をしたわけでもなければ、術後の後遺症に苦しんでいるわけでもない。昨季の惨憺たる成績は、今の吉見の実力そのものといえよう

 この結果を受けて吉見は、昨秋からファームの改造に取り組みはじめた。特徴的だった体の沈み込みをなくしたシンプルなフォームは、今季に懸ける悲壮な決意の表れでもある。フォームを変えるだけではなく、なんと吉見は生命線でもある低めへの“意識”にもメスを入れた。「とにかく低くをずっと意識してきたけど、ちょっとスタイルを変えていこうと。高めがテーマ。ブラッシュボールというか、(打者を)起こすのもやっていけたら」*1

 近年の研究によれば高めは当たれば飛距離が伸びる一方、高めにいけばいくほど空振り割合が増加するという統計が出ているそうだ*2。これはフライボール革命の影響によりアッパースイング気味の打者が増えたことが関係しているとみられる。こうしたデータを知ってか知らずかは分からないが、吉見の意識改革はトレンドに適ったものといえよう。

 

吉見を優遇すべき理由は無い

 

 ここ数年の吉見は、他のローテ投手には無い様々な配慮を受けてマウンドに立ってきた。100球制限、イニング制限は当たり前として、投げては抹消を繰り返す特例ローテ、ナゴヤドーム中心の登板もそうだ。同じように過剰な配慮をしてきた松坂大輔と共に、吉見は“実績”というプロ野球界における最強のカードを武器に、息絶え絶えになりながらも、なんとかここまで現役生活を過ごしてきた。

 だが、それも今季までだろう。梅津晃大、小笠原慎之介、山本拓実ら若手の台頭も目覚ましい中で、吉見を優遇すべき理由は無くなりつつある。もはや黙っていてもローテの座が用意される立場でもない。そういう意味では、たかがシート打撃といえども常に結果を求めてアピールし続けなければならないのかもしれない。

 

 

*1:中日スポーツ「低め意識から変える!  中日・吉見、ブラッシュボールも行くぞ」

*2:「新時代の野球データ論」Baseball Geeks編集部(株式会社カンゼン)p176~181