ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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山本拓実、理論と実践の融合

 北谷球場でおこなわれた阪神との練習試合。序盤に4点リードするも、中盤に逆転を許した末に競り負ける展開に早くもフラストレーションを溜めているファンもいるようだが、この時期の練習試合なんざ1ヶ月も経てばキレイさっぱり忘れる程度のもの。たとえば昨年の練習試合の内容を、いま暗唱できるファンがどれだけいるだろうか。

 勝敗にこだわるのは、一応記録が残るオープン戦からでいい。もちろん当落線上の投手でありながら6失点を喫した阿知羅拓馬は猛省すべきではあるが、京田陽太の三振がどうだとか、そんなことは案ずるだけ無駄というもの。主力級はあくまで開幕に合わせて調整しており、この時期はまだ実戦で生きたボールに目を慣らしている段階に過ぎない。

 落合博満が1986年のオープン戦のとある試合で「今日は打席に立つだけ」と言って本当に全球見逃してあっけなく三振に倒れたのは有名な話。また記憶に新しい昨年のオープン戦でも、シーズンでMVPを獲得した坂本勇人は打率.182と絶不調、中日でもビシエドが.212と低迷し、ずいぶん心配がられていたものだ。

 

覚えてるぞ。ヤマサキが「今年のビシエドは太ってキレがない」と散々酷評してたのを

痩せなきゃ沖縄に連れてかんぞと脅されて必死でボクササイズに励んでたのはどこのどいつだっての

 

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▲木俣コーチに脅されて薬師寺保栄に弟子入りした山崎選手
(中日スポーツ 1994年12月7日1面)

 

さすが理論派、山本拓実の進化

 

www.chunichi.co.jp

 山﨑の話は置いておいて。今日の練習試合で最も印象に残ったのは先発・山本拓実の“巧みな”投球術だ。3回無失点という結果もさることながら、いかにも頭を使って投げていることが伝わってくる、1球たりとも無駄のない内容は、ハタチになったばかりとは思えないクレバーさと底知れぬ可能性を感じさせてくれた。

 例えば昨秋から習得に励んでいるというスラッターを今日の試合では投げたようだが、単にそれで抑えた、打たれたではなく、思惑どおりの軌道で変化したか、どの程度打者が真っ直ぐと錯覚するか、といった再現性を逐一確認しながら投げているのがひしひしと伝わってきた。もはや山本は、目の前の打者を抑えるのに必死という段階はとうに過ぎてしまったようだ。

 山本といえば自己負担で「ドライブライン・ベースボール」のセミナーに参加したり、チームでもいち早くスラッター習得に取り組むなど、“データを活用して技術向上を目指す”、いわゆるピッチデザインの研鑽にも余念がない理論派として知られる。どんな世界でも理論派は一歩間違えると柔軟性のない“頭でっかち”に陥りがちだが、167センチの低身長ながらプロの指名を受けるほどの身体能力の持ち主なら両立も問題ではない。

 理論と実践を融合させ、3年目の山本がさらなる進化に挑む。