ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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石川昂弥、衝撃のデビュー戦

 「ドガッ」 鉛をぶつけたような重低音が雨模様の読谷球場に鳴り響いた。打球の行方を目で追うが、認識できた時にはフェンスに達していた。あまりの速さに、人間の目では追いかけることすらできないとでも言うのか。ぬかるんだグラウンドに足を滑らせたのか、2塁ベース上ではオーバーランしかけた石川昂弥が恥ずかしそうにはにかんでいた。その笑顔にはまだ高校生のあどけなさが残る。つい数秒前、凄まじい当たりの打球を放った怪物と同一人物には思えないほどだ。

 ライトオーバーのタイムリーツーベース--。待ちに待った対外試合デビュー戦で、石川はいきなり想像を絶する衝撃を残した。それも少しよろめきながら、逆方向に、あれだけの当たりを打てる右打者がこれまでドラゴンズにいただろうか。少なくとも私が熱心に野球を見るようになった1995年以降では記憶にない。ついぞ現れることのなかった本格的なスラッガー誕生を予感させる風格。「2020年代は“石川の時代”になる」。そう確信するには、十分すぎるほどの一打だった。

 

驚異の対応力をみせた第1打席

 

 第2打席の衝撃はさることながら、三振に倒れた第1打席の内容も見過ごしてはならない。沖縄電力の先発・内間敦也は今季の大卒ルーキーと同学年の22歳。最速149キロの真っ直ぐを武器に、ゴサ高時代はドラフト指名候補にもあがった実力者だ。ノンプロとは言え、場数では石川を遥かに凌ぐ。いくら石川が凄いと言っても、そう簡単に打たせてくれる相手ではない。ましてや初見となれば投手有利。

 しかし石川は緩急を使って攻めるバッテリーに対し、驚異的な対応力で食らいつく。目を見張ったのがカウント2-2からの5球目だ。外角へのタイミングを外す変化球に、石川は泳がされながらも対応し、なんとかファウルで凌いだのである。並の高卒ルーキーならバッテリーの思惑通りに空振りを喫していただろう。フリー打撃を見た評論家たちが口々に絶賛した対応力の高さが垣間見えた。7球粘った末に最後はフルカウントからスライダーを見逃して三振に倒れたが、8球投げさせて空振りはゼロ。淡白とは程遠い中身の詰まった内容に、早くも大器の片鱗をうかがわせた。

 第2打席で打ったのは初球のスライダー。1打席目に手が出なかったのと同じ球だが、なんと石川はこれを「狙っていた」*1のだとか。視察に来ていた与田剛監督も「対応能力が素晴らしい」*2と目を細めたという。

 

 

根尾と石川で支える未来

 

 一方で、先日の紅白戦に続いて無安打に終わった根尾昂の2打席は、やや物足りなく感じた。第1打席は昨年、嫌というほど見たフルスイングの空振り三振。1年目ならそれも若さゆえの積極性と前向きに捉えることができたが、2年目となればそう悠長なことも言ってられない。昨年、ウエスタンで喫した三振数はダントツ1位の127個。まずはこれを減らす工夫を見せてくれないことには、一軍定着は難しいだろう。第2打席は1死二、三塁のチャンスでセカンドゴロを転がして打点が付いたが、そろそろ外野まで飛ぶ打球も見たいところだ。

 昨年、根尾の打席を何百と見た中で数える程度にしか無かった目の覚めるような当たりを、石川が初っ端から見せてしまったのは紛れもない事実だ。石川の評価が上がれば上がるほど、相対的に根尾を見る周囲の目が厳しくなるのは避けられそうもない。しかし、まだ19歳だ。与田監督も今日の試合後、「根尾と石川が並んだ打順は見応えがある。うちのカラーにしたいという思いもある」*3と未来の中軸コンビに期待を寄せた。おそらく今後もそれを前提とした起用をしていくのだろう。

 昨年は根尾が一身に背負っていた感のあるドラゴンズの未来を、今年は石川という頼もしい後輩と共に支えることになる。その先に待つのは、栄光の昇竜復活だ。