ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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忘れじのオールドルーキー

 ティー打撃ではネットを破壊し、ロングティーでは飛ばし過ぎないように球団関係者からストップがかかり、パウエルコーチからは体格を称賛されるなど、日に日に期待が高まるばかりの石川昂弥。「キャンプ一軍スタート濃厚」「開幕3カード目には一軍昇格でサードユニフォーム着用」なんて気の早い声も聞こえてくるなかで、1年前とは違う静かな環境で着実にツメを研いでいるのが根尾昂である。

 元旦以来、ひさびさに一面を飾った今朝の中スポによれば昨季より35グラム重いバットを使い、連日7時間のハードトレでみっちり鍛えているのだという。見出しは堂々の「キャンプ一軍」。今年の石川と同様、一軍スタートが確実視されていた昨年の根尾はキャンプインを目前に控えた1月24日に軽度の肉離れを起こし、プロ入り初のキャンプは無念の二軍スタートになった。あれから1年が経ち、その注目度が大きくダウンしたのは紛うことなき事実だ。ただ、秘めたるポテンシャルは誰もが認める一級品。にもかかわらず攻走守どれを取ってもミスが多く、抜群の身体能力を持て余すようなプレーの数々を目にすると、器用貧乏という言葉が浮かんでくる。

 まだ高卒2年目とはいうが、悠長に構えているうちにいつのまにか過ぎていくのが時間というもの。森野将彦や高橋周平のように時間をかけてレギュラーを取るのか、そもそも内野手でいくのか外野手でいくのか。20年シーズンは、未知数な部分が多い根尾の方向性が見えてくる1年になるだろう。

 

最初からクライマックス・岡野

 

 そうは言うものの根尾はまだ19歳だ。石川に至っては18歳。多少の遠回りはいくらでも取り返せる年齢である。一方で、ルーキーにして1年目から「結果」だけが問われる立場の選手がいる。ドラフト3位・岡野祐一郎だ。

 プロ選手の経歴としては最も遠回りである大卒社会人出身。それに加えて一昨年のドラフトでは社会人屈指の投手といわれながら無念の指名漏れを経験した。ルーキーながら、4月に誕生日を迎えれば26歳。高卒なら8年目、大卒でも4年目の選手と同じ立場にいきなり立つことになる。チームメイトでは濱田達郎、柳裕也、京田陽太らと同世代。いわゆる大谷・藤浪世代でもあるが、もちろん彼らとは違いプロでの実績は皆無。「もし今年結果が残せなければ、途端に厳しい立場に追い込まれる」(アマチュア野球研究家・@yamadennis氏)との見立てはその通りだと思う。

 だからこそ今年のルーキーの注目株を問われたら、私は迷わず岡野を推したい。一昨年、まさかの指名漏れという現実に直面しても、岡野は腐らなかった。それどころか社会人3年目の昨季は都市対抗予選で6試合43回を投げて防御率0.84をマークするなどキャリアハイの成績を収めてドラフト上位指名を掴み取った。その根性と反骨心はプロでも活かせるに違いない。

 

忘れがたい15年前のオールドルーキー

 

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▲木俣氏も絶賛した樋口はわずか3年で引退した

 

 さて、中日が指名した投手の“オールド・ルーキー”*1は14年入団の祖父江大輔以来となるが、それより前となるとゼロ年代の半ばまで遡る。05年入団の樋口龍美である。この樋口、なんと1位指名としては史上最高齢となる28歳6ヶ月。それでも当時、ローテ投手でサウスポーは39歳の山本昌だけという台所事情にあって、樋口は喉から手が出るほど欲しい存在だった。

 元々、スカウトの頭に樋口の指名はなかったという。実力があるのは分かっていても、やはり高齢がネックとなったためだ。しかし5月中旬、落合監督からスカウト部にリクエストが届いた。「来季、すぐに使える選手を獲って欲しい。年齢は幾つでもいい」。これを受けて中田部長を筆頭とするスカウト部は急遽方針を転換。「今年のアマで、来年すぐに10勝級の働きができるのは彼しかいない」と樋口の獲得に踏み切った。

 だが期待された1年目に椎間板ヘルニアでシーズンを棒に振ると、2年目は肩、ヒジ痛、さらには原因不明の帯状疱疹にも悩まされ、サイドスローに転向した3年目も二軍では8試合23回を投げて防御率1.57とそれなりの成績を残すも一軍に呼ばれることはなく、その年を限りにユニフォームを脱いだ。一軍公式戦に一度も出場せずに引退したドラ1選手は球団史上、71年入団の氏家雅行に次いで2人目。わずか3年間での引退も野村亮介(14年入団)に並んで史上最速である。

 即戦力としての期待が高い分、ひとつの故障が選手生命に直結するなどリスクを伴うのがオールドルーキーの怖さでもある。果たして岡野はどうなるか。半年後にはおおよその答えが出ているだろう。

 

【参考資料】

中日スポーツ 2004.11.22一面

*1:ここでは数え年26歳以上での入団とする