ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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メジャー通算9発男・シエラに夢を描く!

 今朝の中日スポーツ2面には度肝を抜かれた。

 「メジャー通算9発男シエラ獲得」

 例えばビシエドのメジャー通算66発や、阪神に新加入するボーアの92発なら、大砲としての期待値を端的に表す数字として目を引くものがあるだろう。だが9発という数字をわざわざピックアップして「通算9発男」と称号を与える必然性がどこにあったのだろうか。それならば見出しの右横に小さく載っている「強肩外野手」という特徴を誇張して「アレックス二世!」とか書きたてた方が分かりやすいと思うのだが。

 通算9発というのは中日でいえば野本圭と同じ数字である。野本が台湾リーグやメキシカンリーグに挑戦するとして、現地のメディアが「ジャパン通算9発男ノモト獲得」とかいって喜んでいたら、いやいや、うちのノモトを勘違いしてくださんなと慌てて訂正したくなるだろう。そのくらい9発というのは実に微妙な数字であるし、はっきり言えばファンが喉から手が出るほど欲している長距離砲とはかけ離れた存在といえよう。しかも最後にメジャーで9発目を打ったのは、もう5年も前の話。日本エレキテル連合が「ダメよ~、ダメダメ」と言いながら連日テレビに出ていた頃といえば、どれだけ昔のことか感じられるはずだ。

 だが私は、チームの補強ポイントに合致しないこの男こそが中日をAクラスへと導く救世主になるのではと予感している。メジャー通算なんて気にするな。大切なのは、ハングリー精神だ。

 

メジャー通算本塁打はあてにならない

 

 メジャー通算本塁打数が必ずしも日本での活躍を約束する数字でないことは、歴史が雄弁に語っている。例えば来日1年目に64試合時点で30ホーマーに到達した規格外の化け物、アレックス・カブレラ(西武など)のメジャー通算はわずか5発。そのカブレラと共に別次元のホームラン競争を演じた史上最強の助っ人、タフィ・ローズ(近鉄など)も675打席で13発しか打っていない。古すぎて参考にならない?それならテン年代最高のアーチストであるウラディミール・バレンティン(ソフトバンク)だって通算15発で来日した。

 一方、阪神では鳴かず飛ばずだったウィリン・ロサリオ(元阪神)はメジャーで堂々の71発を放ったにもかかわらずあの結果。ケビン・ユーキリス(元楽天)に至っては通算150発の実績を引っさげて来日するも、既に晩年に差し掛かっていたとはいえ1発打ったのみで退団してしまった。

 あくまで都合よく前例を切り取ったのは白状するが、あながち無視すべきデータではないことはお分かりになるだろう。高校野球の通算本塁打数と同じく、こんなものはちょっとした参考に過ぎない。むしろヘタに50発とか100発とか打っているよりも9発くらいがちょうどいいのだ。

 またシエラは選球眼に長けた選手との指標も出ているようだ。ディオネス・セサルが首位打者を獲得したメキシカンリーグでの話なので信憑性は微妙だが、決して選球眼が良いとは言いがたいソイロ・アルモンテの競争相手としてはおもしろい。

 

ハングリー精神が強い方が勝つ

 

 昨日も書いたように、野球協約には「26歳以上となる新入団外国人選手を育成選手から支配下選手へ移行する場合の期限は、3月末日まで」と規定されており、シエラはキャンプ、オープン戦でアピールできなければ1年間を棒に振ることになる。このような極めてリスキーな契約を敢えて飲んだ真意は計りかねるが、少なくとも元メジャー選手の経歴に胡座をかいた選手ではないのは確かだ。

 そういえば2011年、名前の通り守護天使のように舞い降りた“竜のミスタービーン”ことエンジェルベルト・ソトも最初はテスト生からの入団だった。また2012年に田島慎二と共にブルペンを支えたホルヘ・ソーサ、他球団に目を向ければ2013年のパ・リーグ本塁打王ミチェル・アブレイユ(日ハム)、古くは暴れん坊バルビーノ・ガルベス(巨人)なんかもテスト入団だ。

 テスト入団と育成契約とでは雇用形態が大きく異なるので一概に比較はできないが、プロ野球は昔からハングリー精神がより強い方が勝つ世界である。そういう意味でもシエラは中日に嵐を起こす予感がするとまで言ったら、ちょっと買いかぶり過ぎだろうか。

 あらためて、日本で成功するための鍵はハングリー精神と、外スラに釣られないかどうかなのである。

 

ロサリオが身をもって証明した外スラくるくる系のダメっぷり。シエラに関しても来日当初はまずここを確認すべきだろう