ちうにちを考える

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DH制導入!人的補償撤廃!原辰徳の進撃

   ここ数日、オフの球界を一番騒がせている話題といえば、プレミア12でもFA戦士たちの動向でもなく、なんといっても巨人軍監督・原辰徳による“球界提言”という名の放言だろう。

   事の起こりは10月24日、屈辱のスイープで敗れ去った日本シリーズから一夜明け、原がシーズン終了のオーナー報告を読売新聞本社で行ったあと。報道陣に対して、まるで完敗の鬱憤を晴らすかのように思いの丈をぶちまけた。その中で出た改革案こそが「DH制度の導入」だった。

   原は「投手は投球に専念でき、レベルも高くなってくる。ルールの違いにどういうメリットがあるのか。何を立ち止まっているのか」と語気を強めると、さらに「レギュラーは増えた方がファンだっていいと思う。少年野球で言えば教育的。レギュラーが9人から10人になる」と、DH導入による教育的効果にまで思いを馳せた。

   するとスポーツ報知はさっそくTwitterで投票を実施。10月31日の一面で「76%のファンがDH賛成」という結果を掲載し、原提言をファン目線から後押ししたのである。

   これに対してネット世論は侃侃諤諤。賛否両論が乱れ飛ぶ事態に発展した。意見をざっくりまとめると、「導入そのものは賛成だが巨人主導のルール改正は納得いかん」というニュアンスのものが多いように感じた。当然これらは巨人以外のセ・リーグ5球団のファンの声だ。

   まるで憲法改正には賛成だが現行政権下での改正は反対という中道保守派のような見解だが、DHに関しては私も同じ立場である。

 

巨人が得するDH導入

 

   確かに投手の打席は打つ確率が低く、退屈な場面が多い。特に二死無走者のような場面ではホームプレートから極端に離れて立つなど打つ意思がないことを示す選手もちらほらいる。長年そういうものだと割り切って見ているので改めて異議を唱える気もないが、真剣勝負にあるまじき光景であることは間違いない。またせっかくのチャンスが二死で投手に回った時点でほぼ詰むのもシラケてしまう。

   本来ならば諸手を挙げて賛成したいDH導入だが、そうもいかないは今回の言い出しっぺが巨人の現役監督であるからに他ならない。

   DHを導入したあとに何が起こるのか。少し想像すればすぐに分かる。今季、パ・リーグでDHに外国人を主に起用したのはソフトバンク(デスパイネ)、楽天(ブラッシュ)、オリックス(ロメロ)の3球団。歴史的に見てもDHには打力特化型のパワー系外国人を置くことが多い。もしセ・リーグにDHが導入されれば、他球団の優良外国人の引き抜きには定評のある巨人が今まで以上に容赦ない補強に走るのは必至。おまけにこれまで守備力に難があって獲得を控えていたパ・リーグのDH外国人にも食指を伸ばすのは間違いない。

   かたや貧乏球団はレギュラー野手が一枠増えるため財政難も深刻化し、外国人を引き止める資金など捻出できるはずもない。もはや巨人のための仲卸である。セ・リーグでは広島だけが明確にDH導入に反対を表明しているのも、財政面での理由が大きいだろう。

 

人的補償撤廃を要求!

 

   DH導入の是非を問う議論が燃え盛るなか、原は矢継ぎ早に新たな燃料を投下した。11月5日、ジャイアンツ球場で全体練習を見学したあと、今度はFA制度の人的補償撤廃を訴えたのである。主張はこうだ。  

   「FAで選手を取るというのは、野球界全体の活性化。それはマイナスでなく、プラスなこと。明るい話なのに、そのこと(人的補償)になった途端、暗いニュースになる。これはあってはいけないことですよ」。

   さらに具体的な代替案まで飛び出した。 

   「(プロテクトリスト作成は)本当につらい作業。本当は撤廃してほしいけど、枠をもっと広げないといけない。投手20、野手20なら話は分かるな」。

   さすがに撤廃は現実的でないにせよ、ならば現行のプロテクト枠28人を40人に広げよーー。原が展開した持論は、メディアで報じられるや否やたちまち炎上。主に巨人以外のファンから袋叩きに遭っている(当の原はノーダメージだろうが)。

 

   資本主義の観点に立てば原の主張は正論だと言わざるを得ない。トランプ大統領に同じ問いを投げかけても原と同じ意見を持つだろう。いわば金持ちの論理。市場の活性化を促す自分たちの行為は、あくまで正義であるというわけだ。

   ただ、プロ野球はビジネスである前に興行だ。選手や球団といった当事者たちにとってはビジネスでも、そのコンテンツを支えるのが市井のファンである事実は揺るがない。身もふたもない“マネーゲーム”が支配する娯楽を、巨人(と一部球団)以外のファンに純粋に楽しめと言うのはムリがある。

 

   いずれの主張も、実現すれば得するのは言うまでもなく巨人だ。なんやかんや御託を並べても、結局は自分たちの思い通りにルールを改正したいという欺瞞が透けて見える。

   ならばいっそのこと、最初から優勝は巨人しか認めないというルール、名付けて“巨人軍自動優勝”を導入すれば如何だろうか。例え143試合の戦いの末に巨人が優勝できなくても、ルール上の優勝は巨人で、日本シリーズに進むのも当然巨人。そして日本シリーズで哀れな全敗を喫しても、日本一は巨人。ワガママな原監督も、これならお気に召すのではないだろうか。選挙の結果、信任率100%で当選する金正恩みたいに。

 

【参考記事】

日刊スポーツhttps://www.nikkansports.com/m/baseball/news/amp/201910250000162.html

スポーツ報知

https://hochi.news/amp/articles/20191031-OHT1T50009.html

日刊ゲンダイDIGITAL

https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/264208