ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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中日愛の勝利!大島残留

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   大島洋平がFA権を行使せず、中日に残留することが決まった。嬉しいというよりホッとしたというのが率直な感想だ

   降って湧いたような大島FA騒動の発端は先週23日の日刊スポーツの記事だった。当初はいわゆる飛ばし記事かと楽観視していたが、事態は日を追うごとにきな臭くなっていた。中スポを含む複数メディアがにわかにざわつき始めると、若狭アナも不安を煽り、さらに本人も悩んでいることを認めたため、いよいよ騒動が拡大。加藤球団代表の弱気とも取れる発言も相まって、たちまちロドリゲスの去就と並ぶ懸念事項となった。

   28日には与田監督がシーズン終了後、直々に残留交渉を行っていたことを明かすなど、報道から受ける印象としては、球団側は精一杯の誠意を大島に伝えたようだった。これでダメなら仕方ない。宣言すれば争奪戦になることは確実だが、中日としてはもはや打つ手なし。

   FA申請期限である11月1日まで地に足のつかない毎日を過ごさなければいけないことを覚悟していただけに、今日の夕方、唐突に飛び込んできた残竜の一報には虚をつかれた思いがした。そして、大島の言葉を読んで安堵感と喜びがじわっと胸に広がった。

「今回はドラゴンズで野球人生を終える覚悟で返答をしたので、とにかく来年は、チームが日本一になるようにやっていきたいと思います」

   こんなセリフを言ってくれる選手がいるうちは、中日はまだ大丈夫だ。来年も、その先もずっと、中日の背番号8は、1番センターは、大島の指定席だ。

 

FA悲喜こもごも

 

   FA制度が導入されて26年。移籍第1号の落合博満(→巨人)を皮切りに、この制度を使って中日から国内球団へと移籍した選手はこれまでに7人いる。

前田幸長(→巨人)、野口茂樹(→巨人)、中村紀洋(→楽天)、小池正晃(→横浜)、中田賢一(→ソフトバンク)、高橋聡文(→阪神)

   だが、中には今回の大島のように熟考の末に行使せず残留を選んだ選手、あるいは行使したものの残留を選んだ選手もいた。代表的な二人を紹介しよう。

 

1997年・山本昌

   ナゴヤドーム移転に伴いありとあらゆる選手の成績が軒並み落ちたこの年、初の開幕投手を務めた山本昌だけは開幕から好調をキープし、キャリアハイの18勝をあげて自身3度目の最多勝と初の最多奪三振のタイトルを獲得する。

   孤軍奮闘の活躍を見せた山本は、入団12年目にして満を持して国内FA権を取得。売り時としては最高のタイミング。行使すれば大争奪戦が巻き起こることは必至。気を良くした山本は行使する気などさらさら無いにもかかわらず、一生に何度もないこの機会を全力で楽しんでやろうと企んだ

   連日、押し寄せる報道陣に対して思わせぶりなことを言っては腹の中で笑っていたある日、ふと新聞の片隅に載っていた星野監督のコメントを目にして、山本は縮み上がった。「移籍?俺はそんな教育はしとらん!」。このコメントにビビった山本は即座に球団事務所に電話をかけて残留を表明。その後も一切FAを使うことなく2015年の引退まで生涯竜を全うした。

 

2001年・山﨑武司

   FA絡みのいざこざの中ではもっとも揉めたのが、この時の山﨑だった。前年の契約更改では打率.311を記録しながらも本塁打の少なさ(18本)を指摘されて微増どまり(1億2千万円)。ならばと25本を放って臨んだ交渉で提示されたのは、3年4億5千万円という金額だった。

   希望の3年5億円とは大きな開きがあり、当然ながら保留。上積みを期待した2度目の交渉でも提示額は変わらず、遂に山﨑はFA行使に踏み切った。これに反応したのが大砲不在の横浜だった。横浜は当初、5年契約を満了した清原和博にターゲットを絞っていたものの、結局巨人に残留。そこで山﨑に狙いを切り替え、3年6億、4番一塁確約という破格の条件を提示したのだった。

   だが宣言した時点で「基本的にはドラゴンズが一番」と語っていたとおり、生まれ育った名古屋を簡単に捨てられるほど山﨑は薄情な男ではない。就任したばかりの山田監督も「権利を行使してもわだかまりは何もない。うちに必要な戦力だと伝えてある。もし打撃がよくなっているという評価になればゴメスが三塁、立浪も二塁とかいろいろな選択肢が出てくる。おれを困らせるくらいになってほしい」と残留を熱望。情にほだされた山﨑は一転して残留を決意したのだった。

   会見では「お金だけなら横浜でした。でも名古屋にはお金では買えないものがあるんです」と語るなど、この時はまだ生涯竜を匂わせていたのだがーー。

本当に山田監督を困らせて、一年後にトレード志願するわけだ

そして未だにわだかまりが残ってる。コントかよ

 

大島残留で福田獲り撤退か

 

   大島の残留がチーム編成に与える影響は大きい。根尾昂の外野コンバートも当面見送りになるだろうし、伊藤康祐や高松渡の育成プランにも少し余裕が持てる。そして参戦を表明している福田秀平争奪戦からは限りなく後退したのも確かだ。

   福田の要求が出場機会だとすれば、既に内野のレギュラーが満席で、外野も福田永将、平田良介、そして大島で埋まる中日はハッタリでもレギュラー確約を与えることはできない。一方でバレンティンや秋山翔吾の退団が確実視されるヤクルトと西武はこれを契約条件に盛り込むことが可能。となれば、ソフトバンクの高額な提示を蹴ってまで市場に飛び込んだ福田が中日を選ぶ理由など何もない。

   Cランクだからと言ってむやみに挑戦する金と暇があるなら、その分をロドリゲスの残留に回して欲しいと思うのが大方のファンの共通の願いだろう。