来年、ブレイクしそうな選手は誰かと問われたら、迷うことなく「石垣雅海」の名前を挙げたい。高卒3年目の今季は8月21日に死球の影響で抹消された平田良介と入れ替わる形で2年ぶりの昇格を果たすと、その日の巨人戦で菅野智之からプロ初安打となるツーベースを記録。そこからしばらく足踏みが続くも、9月5日にはまたしても巨人戦で二死一、三塁から中川皓太から打ったツーベースが嬉しい初打点となった。
今年打った安打はこの2本だけ。15打席15打数2安打7三振。これが今年、石垣が一軍で残した全てである。粗削りにも程があるが、結果的に石垣は最後まで一度も抹消されずにシーズンオフを迎えた。普通に考えれば抹消でもおかしくない成績にもかかわらず、首脳陣が石垣を一軍ベンチに置き続けたのは、わずか2本の安打と13度の凡退がいちいち輝きに満ち溢れていたからに他ならない。
いわゆる“当てただけのゴロ”とか、“打たされただけのポップフライ”は石垣の打席にはほとんどない。7三振のうち見逃しで喫したのは1個だけ。あわやホームランかという目の覚めるようなファウルをポール際にぶち込んだこともあった。
若い選手は凡退が続くと、どうしても結果欲しさに縮こまったバッティングになってしまいがちだが、石垣は違う。とにかく気持ちいいほどのフルスイングを貫き、例え結果が伴わなくとも、石垣の打席にはファンを、そして首脳陣をワクワクさせる魅力に溢れていた。それは古き良きナゴヤ球場時代の強竜打線を彷彿とさせるものであり、大豊泰昭、山﨑武司以来となる和製大砲の誕生を予感させるものでもあった。
テラス設置で覚醒へ
頭部死球をも「慣れた」と言ってのける図太さもスラッガー向きだ。その石垣が今日、みやざきフェニックスリーグのヤクルト戦で打棒を発揮した。
2打席連発を含む4打数4安打3打点。そのうち3安打は一軍でも活躍する高梨裕稔から打ったもの。2ホーマーはいずれも豪快に振り抜き、レフトスタンドに運んだ。
昨年のフレッシュオールスターで弘前球場のバックスクリーンにぶち込んだ当たりもそうだが、石垣の打球はセンターから左中間方向によく伸びる。弾頭の質でいえば元広島の新井貴浩に似ているだろうか。まさにスラッガーのそれである。
となると、ナゴヤドームのあのフェンスが文字通り“壁”として立ちはだかるわけだが、本当に再来年からホームランテラスが設置されるならば、その恩恵を真っ先に受けるのはちょうどレギュラー奪取を狙う時期に差しかかる石垣ということになるだろう。
このあたり運も持ってるね
ナゴヤドームに殺された選手は数知れず。覚醒した翌年から移転で苦しんだ山﨑も、今思えばナゴドの被害者だったのかもな
いや、あれはただの慢心だろ
チームが大島洋平のFA問題や外国人たちの去就に揺れるなか、遠き宮崎の地で気を吐く石垣が頼もしい。なんだかんだ言っても生え抜きの育成はチーム強化の基本中の基本。
根尾昂、石川昂弥だけじゃない。むしろ将来のクリーンアップに一番近い位置にいるのは、この石垣である。