ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ロールモデルとしての石垣雅海

●2-5(49勝62敗2分)

 

Aクラス入りへの微かな希望もほぼ立ち消え、2019年のペナントレースも30試合を残していわゆる消化試合モードに突入した。ここから先は目先の勝利にこだわることなく、個人のタイトル争い及び来季以降を見据えた若手選手の積極起用が見どころとなる。菅野に今季4度目の完敗を喫したこの夜、最も鮮烈な爪痕を残したのは、まさに期待の若手の一番手とも言える石垣雅海だった。

 

成長みせたプロ初安打

 

7回裏、代打で登場した石垣は、球界最強エース・菅野の前にわずか4球で追い込まれた。思い出すのは2年前の10月4日、横浜スタジアムでのプロ初出場の姿だ。森繁和監督の粋な計らいでスタメンに抜擢された石垣だったが、結果は3打席連続三振。それでも初球から豪快に振っていける積極性が評価され、誰もが翌年の飛躍を期待したものだ。

しかしゲームのように順調に成長しないのが現実の厳しいところ。2年目の石垣は深刻な不振に陥り、ウエスタンでの成績は主要項目すべてで1年目を下回った。打率1割8分3厘。今の根尾よりも低い打率といえばその酷さが伝わるだろう。自慢の長打力も鳴りを潜めホームランはわずか1本。もちろん一軍昇格の機会は与えられず、一部では「石垣は終わった」との声も聞こえてきた。それほどまでに2年目の伸び悩みは深刻で、成績次第では戦力外リストに名前が載ってもおかしくない、そんな状況で迎えたのが3年目の今季だった。

ところが石垣は踏ん張った。ほぼ全試合に出場した二軍戦では毎日のように攻守で光るものを感じさせ、ちょうどイレブンスポーツで中継が見られるようになったこともあり、ファンからは石垣を一軍で見たいという声が日に日に高まっていった。

満を持して今回、平田の離脱により訪れたチャンス。対峙するのは菅野。アピールするには不足ない相手だが、あっさり追い込まれてしまう。こうなれば菅野からすればオモチャで遊ぶようなものだろう。伝家の宝刀スライダーが外角低めに沈むが、なんとか食らいつく。6球目、やや甘く入ったスライダー。石垣の辞書に「当てに行く」なんて言葉はない。迷わず振り抜いた打球は三塁線を抜いた。嬉しいプロ初安打は菅野から放った二塁打だ。

2年前の初出場でみせた豪快なスイングはそのままに、正確性を備えて石垣は一軍に戻ってきた。まだ3年目の21歳。石垣の打席が楽しみな残り30試合になりそうだ。

 

ロールモデルとしての石垣

 

石垣の成長は、あるいは今後の若手育成のロールモデルになり得るかもしれない。坂田南高時代は生粋のスラッガー。守備力を度外視した指名はドラゴンズには珍しく、どんな風に育つのかは未知数な中でルーキーイヤーから積極的に出場機会を与えられてきた。

ナゴヤドーム移転後のドラゴンズは「守り勝つ野球」という幻想にとらわれ、兎にも角にも(アマチュアの中では)守りと機動力に長けた野手をドラフトで優先的に指名し、その弊害としてレギュラー野手が全くと言っていいほど育っていない現状が生まれたのは周知の通りだ。

その点に関してスラッガータイプの石垣を上位指名したこと自体が異例だったのだが、興味深いのは度外視していたはずの石垣の守備力がここにきて飛躍的に向上したことだ。前述の通りナゴヤドームに適した選手を育成することに尽力してきた経緯から守備練習のノウハウがあるうえに、二軍のコーチ陣の顔ぶれを見ても分かるように入団後の守備力向上がじゅうぶん期待できる体制は整っている。

 

つまりスラッガータイプの選手を獲得し、守備はあとから叩き込むという獲得方針でもいいんじゃないかってことだね

 

堂上や高橋がいい例だ。なんせ打撃よりも先に守備が上達しちゃうんだからな

 

たしかにナゴヤドームは広すぎるが、それ以上に広さを意識し過ぎたチーム作りが今の窮状を生んだのは否めない。

堂上や高橋といった特A級の才能でなくとも石垣がここから一軍定着するようなことになれば、今後は守備に目をつむった打力重視の指名が増やせるかもしれない。だから石垣は今後のチーム方針を左右するロールモデルになり得るのだ。