ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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加藤で勝った試合

◯4-2(49勝58敗2分)

 

幸先よく4点を先取し普通ならこのまま優位に立てる試合ではあるが、ここは神宮球場だ。普通じゃない光景を幾度となく目の当たりにしたせいで、この球場においてはセーフティリードなど存在しないことをドラゴンズファンなら誰もが知っている。ましてや4点程度の吹けば飛ぶような“僅差”はきっかけひとつであっという間に逆転されることもよく分かっている。

先発のロメロはめずらしく変化球を使って初対戦(!)のヤクルト打線を手玉に取り、ひとまわり目こそパーフェクトに抑えたものの、4回裏に先頭の廣岡にソロを浴びるともう冷静さを保てない。無死満塁として雄平に不運なタイムリー内野安打を浴びて2点差。後続はなんとか抑えたが、試合展開的には完全に流れを持っていかれた格好だ。去年までなら確実にここから逆転負けを喫していただろう。

5回裏、一死から二塁打と四球で一、二塁としたところでベンチは早々とロメロを諦める。いや、むしろ我慢したと言えるかもしれない。それくらい序盤3イニングと4,5回のロメロは別人のようであり、投げながら修正するほどの技術をロメロは持っていない以上、どう耐えてもここが限界だった。

 

冴えた加藤のプレー

 

おそらく予定よりも少し早いタイミングでの登板となった三ツ間から始まり、福、藤嶋、ロドリゲス、岡田と、勝ちパターンのリリーフを総動員してもぎ取った勝利であるが、投手たちの踏ん張りはもとより捕手・加藤の冷静なリードが光った。

評価すべきはことごとくピンチで迎えた山田に対して逃げることなく向かっていった事だ。ここ4試合で3ホーマーを放っている山田とはまともに対戦したくないのが本音ではあろうが、ヤクルト打線は山田から逃げてもバレンティン、雄平、さらに村上と強打者が続く構成になっているため、ランナーを溜めて自らを追い詰めるよりも潔く山田と勝負した方が案外吉と出る可能性は高い。というより、ダメ元で勝負して打たれても相手が山田ならバッテリーも諦めがつくというもの。

特に9回裏、岡田に要求したフルカウントからのスライダーは、山田自身もまさか自分に対してストライクゾーンで勝負してくるとは思っていなかったようで呆気にとられたような見逃し方が印象的だった。

 

パワプロやってて投げるとこ無くなるとヤケクソ気味にストライクゾーンに放るようなものか

 

一緒にすな

 

もうひとつ加藤のプレーで忘れちゃいけないのが8回裏の好ブロックだ。村上のフェンス直撃打を見てホームを狙ったランナー雄平の位置を確認しながらも、中継の京田からの返球はやや高め。少し背伸びして捕球するやいなや滑り込んでくるランナーをしゃがみながら半身でタッチするという難しい動作をピンズドのタイミングで成功させたのだ。仮にセーフなら1点差でなおも一死二塁。まさに間一髪でチームを救ったナイスプレーだった。

 

加藤の逆襲

 

実質的な正捕手として開幕からマスクを被り続けた加藤だが、7月7日に無念の降格を命じられた。「ここまで頑張ってきたけどまだまだ物足りない。(二軍で)勉強してきて欲しい」(伊東コーチ)。慣れない一軍出場で疲労もピークに達していたのだろう。随所に精彩を欠いたプレーが見られ、抹消も致し方なかった。

だが加藤は二軍で腐らず研鑽を重ね、一ヶ月経たずして再昇格を果たした。誰かとの入れ替わりでなく、チームに必要とされての昇格だった。再昇格から6試合でスタメンマスクを被り3勝1敗2分。とりわけリリーフ陣の好リードが目立つ。そういえばシーズン序盤はピンチになると動揺してリードが単調になることも多かったが、いつのまにかドシッと構えて冷静にリードできるようになったものだ。

 

余談だが「スポナビ」の野球速報アプリのMVP投票では今日の加藤は得票率0.7%で10位。そんなはずがないと二度見したが、やっぱりロメロ(8位)より下の10位だ。案外捕手のリードというのは注目されていないようである。