ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ふたつの“引き”

●6-10(46勝56敗1分)

 

「50歳すぎて性格なんか変わらない」、加藤浩次は吉本興業の社長をこう断罪したが、50歳まで待たなくても人の性格なんて物心ついたらそうは変わらないのかもしれない。“三つ子の魂百まで”とも言うように、エンニー・ロメロ(28歳)を見ていると性格を変えることの難しさをつくづく思い知らされる。

今季3度目となる天敵・平良との対戦を迎えて各打者は相当な覚悟で臨んだであろう一戦。村上コーチも試合前「対策はあります。見ていてください」と豪語するなど、平良攻略への並々ならぬ気合いは確かに感じた。オーダーを大幅にいじったのもその一環だろう。成果は実り、序盤から若干のちぐはぐさはありながらも早々と3点を奪い、主導権を握った。あとはなんとかロメロに踏ん張ってもらうだけーーしかし、そんなファンの切なる願いにロメロは応えられない。

1点リードで迎えた5回、7番から始まる楽な打順のはずが、先頭の嶺井への死球でロメロの自制心が狂いだす。続く伊藤はツーベースで無死二、三塁。こうなったらもう抑えが効かない。まるで直射日光に当たって発熱したスマホのように、もうロメロは正気を失っていた。大和にストレートの四球を与えて満塁とすると、ここからはお馴染みの“真っ直ぐゴリ押しタイム”の始まりだ。

神里にはストレートとカットボールを5球投じてタイムリー内野安打を食らい、筒香にはストレート2球でグランドスラムを浴びてジ・エンド。なぜピンチになるとチェンジアップを封印してしまうのか。なぜ真っ直ぐ系だけで抑え込もうとするのか。春先からの課題だったピンチでの淡白さはコーチや捕手からも散々指摘されているはずだが、それでも治らないのだからもはやこれがロメロの性格なのだろう。

 

ふたつの“引き”を習得せよ

 

ロメロが習得すべきは打者との駆け“引き”と、球種の“引き”出し。ふたつの“引き”である。

なにしろ真っ直ぐだけ狙っていれば良いのだから打者としては非常に攻略しやすく、98.1イニングで17発という多すぎる被本塁打数がロメロの単調さを物語っている。残念ながら日本のプロ野球ではドミニカWLのようにパワーでねじ伏せる投球は通用しないようなので、自慢のストレートを生かすためにも細かい駆け引きの習得は必須である。

そして真っ直ぐ系だけでなく、メジャー時代に投げていたというカーブにも再挑戦して緩急を覚えれば一皮剥けた投球ができると思うのだが、おそらく本人の中にカーブへの苦手意識があるのだろう。ただ、苦手を苦手のままにしていたら成長は期待できない。球種の引き出しを増やさない限り日本での成功が見込めない以上、思い込みは捨てて本気で取り組むべきだ。

このふたつをクリアできれば来年は全く違った投手に進化する可能性もあるが、如何せん時期が時期だけに首脳陣もそう悠長には待ってくれないだろう。ポテンシャルは充分なだけに色々惜しい投手、それがロメロ。このままでは退団濃厚。残された時間はあと一ヶ月半。果たして課題克服はできるのか。“引き”際にはまだ早い。