ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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逃げるが勝ち

◯6-0(46勝54敗)

 

今年の大野雄大は好投しながらも不用意にホームランを打たれて勝ち星が消えるというパターンを繰り返しており、防御率の割に勝ち星が伸びないのもそのせい。いわゆる“一発病”持ちなのである。17被ホームランはリーグ2位の多さで、特にそのうち5本を打たれているのが外国人バッターだ。ほぼストレートとツーシームの2択という典型的なパワーピッチャーゆえにタイミングが合ってしまえば遠くへ飛ばされてしまうのだろう。

だからこのタイミングで巨人がビヤヌエバを上げてきたのは嫌な予感しかしなかったし、今年の大野はビヤヌエバに対して4割1ホーマーと巨人のなかで最も苦手としている打者でもある。巨人ファンの間ではビヤヌエバの二軍での成績が振るわなかったことから再昇格に対して懐疑的な声も出ていたようだが、ちうにちサイドからすればよりによってこのタイミングで上げなくても……というのが本音だと思う。

確かに弱点も多そうな打者ではあるが、それでもゲレーロとビヤヌエバが控える下位打線は迫力満点。特に一発病の大野が苦労するだろうことは試合前から容易に想像がついた。

 

逃げるは恥?いや、戦術だ

 

試合は中盤5回を迎えてドラゴンズが2点リード。ただし腐っても首位の巨人だ。ひとたび打線が息を吹き返せば2点など一瞬でひっくり返るスコアだし、リーグ屈指の被ホームラン率を誇る投手がリーグ最多のホームラン数を誇る打線と対峙しているのだから、どこかでドカンと一発食らう可能性は極めて高い。この手の試合はホームランをきっかけに流れが変わるものだ。

特にホームランしか狙っていなさそうな両外国人には要注意だぞと心の中で警告を鳴らしながら観ていたのだが、そんな心配に対する大野のアンサーは意外なものだった。2回ビヤヌエバ四球、4回ゲレーロ四球、6回ゲレーロ四球。なんと大野は打順が5〜7番に回るたびにどちらか一方を四球で歩かせて物理的にホームランを回避するという逃げの戦術を取ってきたのだ。坂本、丸との対戦で疲弊して気が抜けたところを痛打されるのがいつものパターン。ならば最初から勝負せず、一発の脅威が低い若林と岸田に全力を注げば良いじゃないか。大野がそれに気付いたのかどうかは不明だが、“逃げるが勝ち”が功を奏して素晴らしい結果につながったのは紛れもない事実だ。

 

一方で敵のお株を奪う3ホーマーを放ったのがドラゴンズ。福田の1発目は3球目、2発目は2球目といずれも早いカウントから置きにきたような甘い球を狙い打ってのホームランだった。京田、加藤と非力な打者が続く打順だけに福田との勝負を避けていれば全く違った展開になっていたはずだ。

一般的に勝負事での「逃げ」は恥ずかしいことだとされているが、野球は27アウトを重ねた時点で多く点を取っていた方が勝ちという競技なのだから、そこに至るプロセスなんか関係ない。今日は逃げた大野が正しかった、それだけのことだ。