ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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制球力は正義だ

◯7-3(41勝43敗)

 

8勝21敗。これは今季、強力打線を売りにしている巨人、DeNA、ソフトバンク、西武のセ・パ4球団とのドラゴンズの対戦成績の合計である。勝率にして2割7分5厘。偶然で片付けるにはあまりにも惨憺たる数字だ。

今年のドラゴンズは昨年と同様、指標の優秀な打者が揃っている割には得点に結びつかず、残塁が多い各駅停車打線となっている。リーグ2位のチーム打率に対して本塁打はダントツ最下位の49本、打点も5位の308点なのだから問題点は明らかだ。されどナゴヤドームを本拠地にしている以上、上に挙げた4チームのように打ち勝つ野球に転向するのは容易ではなく、どうしても社是のように唱えてきた伝統の“守り勝つ野球”に頼らざるを得ない現状だ。

しかし投手陣もかつての盤石さには程遠く、またフライボール革命を取り入れた他球団の強打者はいとも簡単にナゴヤドームのフェンスを越える飛距離を叩き出すのだから、ましてや狭いビジターとなればどれだけリードしても安心などできるわけもなく。その意味では今日から始まった横浜スタジアムでのDeNA戦は、まさに今年のドラゴンズが最も苦手とするタイプのカードである。

 

12球団最強クリーンナップの脅威

 

迫り来る“ビッグ4”の脅威は7回裏にやって来た。5回に一気に4点を勝ち越しても全く心が落ち着かなかったのは、この打線の破壊力がそれほど凄まじいからだ。特に筒香、ソト、ロペス、宮崎と並ぶいわゆるビッグ4は12球団を見渡しても最強のクリーンナップと言っても過言でなく、4点差程度ならあっという間にひっくり返せるだけの圧倒的な力を誇る。

この日もやや乱調の谷元が筒香、ソトのタイムリーで2点を返され、スコアは5-3。残るイニングは8,9回のみだが、この球場での2点差などあってないようなもの。引き合いに出して申し訳ないが、昨日までの阪神戦とは比較にならないほどの緊張で手に汗が広がる。

試合は8回表に大島のタイムリーで再び4点差に。しかし、まだ何が起きてもおかしくない。現にドラゴンズはそういう試合を嫌というほど味わってきたのだから……。

 

福の制球力に救われた

 

8回裏、マウンドには福が立つ。10試合連続無失点中の、現リリーフ陣で最も信頼できる投手だ。ところが先頭の伊藤光をあっさりヒットで出塁させてしまう。スタンドはベイスターズの劇的勝利を信じる大勢のファンで超満員に埋まっている。一気呵成だけは避けたいところ。飛雄馬、関根を丁寧に打ち取り、打席にはやたらこのカードで打つ大和。二死とは言え、ランナー溜めてビッグ4に繋がれば厄介なんてもんじゃない。なんとかここで切ってくれーー。

ツーストライク(ノーボール)からバッテリーが選択したのは、外角低めでの3球勝負だった。コーナーいっぱい。球審が力強くストラックアウトを宣告する。立ちすくむ大和。称賛すべきは、この場面で見事にコーナーへストライクを投げ込んだ福の制球力だ。以前「福笑い」というエントリーで福の制球力の良さには触れたが、やはり野球において制球力は絶対の正義だ。

大和の前の関根に対しても粘られてフルカウントからしっかりストライクゾーンに投げたからこそゴロに打ち取ることができた。もし少しでも手元が狂えば四球でピンチが拡大していたのだから、この回、ランナー釘付けで反撃の芽を摘んだ福の制球力こそが勝因だったと思う。

 

10年ぶりの8連勝は、決してドラマチックな奇跡によるものではなく、こうして地力の付いてきた選手達が各々の強みを発揮してこそ成し遂げたものである。