ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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UNSTOPPABLE

◯6-1(30勝39敗)

 

“海南のプレイヤーなら甘ったれたことを言うな”

これは名作「スラムダンク」に登場する海南大附属高校のキャプテン・牧紳一の言葉だ。16年連続インターハイ出場を誇る超名門・海南のスローガンは「常勝」。湘北高校に思わぬ苦戦を強いられる中、相手のキャプテン・赤木剛憲が試合中に負傷。牧は赤木の抜けた穴を突くべく、チームメイトにこう伝える。「よしインサイド主体で攻めるぞ!」と。だが、既に勝利を確信した1年生のお調子者・清田信長はこのキャプテンの指示に対して軽く反論する。「そんな…相手の弱味につけこむようなことしなくても勝てますよ牧さん!!」。

すると牧は「清田…あの文字が見えねえか?」と応援席に掲げられた横断幕を一瞥し、上記のセリフをつぶやくのだ。試合終了の瞬間まで決して油断するような真似はせず、勝利のためなら情け容赦なくベストを尽くす。常勝チームの美学がわずか5コマの中に凝縮された、本作でも屈指の名シーンだと思う。

これを読んで思い出すのはちょうど一週間前、ZOZOマリンスタジアムで味わったあの屈辱である。9回5点差大逆転サヨナラ負けという悲劇を引き起こした要因が“油断”だった事は当日の記事で書いた通り。現状このチームにセーフティリードなど存在しない事や、何点離しても決して隙を見せてはいけない事を身をもって痛感した。もし牧のような高い意識があれば、8日間隔の空いた田島を使うような事も、9回表の無死一塁で亀澤にそのまま打たせる事もなかったはずだ。

もう同じ過ちは繰り返さない。首脳陣も選手も、そしてファンも肝に銘じたはずなのに、残念ながら今日も気の緩みと言わざるを得ない場面を目の当たりにしてしまった。

 

笑い事じゃ済まない

 

問題の場面は7回裏。先頭の高橋がヒットで出塁し、一死から阿部がライト線を破るツーベースを放つと、奈良原三塁コーチャーは手をぐるぐると回して走者の遠藤をホームに突っ込ませたのだ。結果はまだ走者がホームベースから2メートルほど手前にいる時点で返球が到達して余裕のアウト。俗にいう暴走というやつで、一瞬にして追加点の機運が萎んでしまった。

奈良原コーチにまず問いたいのは、なぜ無理をしてまで回したのかという点。あの場面でギャンブルに賭ける必要は全くなく、4点差というリードに油断して1点を軽んじたのではないかと邪推したくもなる。

次に、アウトになった直後、テレビに映し出された奈良原コーチが笑顔を浮かべていた点について。まだ2イニングを残して4点差。先週の悪夢を少しでも覚えているなら、取れるはずの追加点をみすみす逃した責任をもっと重く感じて欲しかった。失敗した際、強がるように敢えて笑顔を作る事は誰にでも経験があると思うが、この試合に関して言えば与田監督の退場覚悟の猛抗議や、そのあとの明らかな誤審(リクエストで覆ったが)もあって、ベンチ内はかなりピリピリしていたはずだ。

おまけに先週の事もあるので、普段以上に油断や隙を徹底的に排除して勝利をもぎ取りに行くべき試合。勝ったから良いようなものを、もし負けていたら間違いなくこの場面は槍玉に上がったはずだ。結果だけ見れば快勝だが、こういう隙を見せているうちはまだまだ。ドラゴンズが「常勝」を掲げられる日は遠そうだ。