ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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救世主なんかいない

◯2-1(25勝34敗)

 

人は弱い生き物だから、うまくいかないことが続くと救世主を求めたがる。かつて経済困窮の末にヒトラーを神と崇めた旧ドイツ国民のように、あるいはポリティカルコレクトに疲弊した保守派白人層が過激な言動のトランプを大統領にまで押し上げたように。

自分たちの報われない状況を劇的に変えてくれる救世主がいるはずだと思い込み、時として熱狂の渦を巻き起こす“共同幻想”は、しかし所詮は幻想に過ぎず、どこかで無理が生じて破綻するのがオチだ。それでも何かに縋(すが)っていなければ安心できないのが人間の性なのだから、もはや救いようがない。

翻ってドラゴンズを取り巻く声も、にわかにきな臭くなってきた。二週間ほど前にモヤを救世主扱いしたかと思ったら、先週は藤井で、今週は福田。挙げ句の果てには根尾を一軍に上げるべきだと言い出すOBまで現れたそうだ。(6月10日付東スポWebよりhttps://www.google.co.jp/amp/s/www.tokyo-sports.co.jp/baseball/npb/1426356/%3famp

 

根尾を待望する無責任なOB

 

当ブログでも再三指摘しているように、ペナントを戦う上で首脳陣は近視眼的な発想にだけは絶対に陥ってはならない。おそらく根尾を上げれば一時的には大きな盛り上がりを生むことができるだろうし、もしかしたら1試合くらいは根尾のタイムリーで勝つような試合も見られるかも知れない。

だが、まやかしの幻想が長続きするはずもなく。覚醒剤と同じで、効いている時は死ぬほど気持ちよくても効き目が切れたらどうするのか。容易に想像がつく。短絡的に救世主を求めるような無責任なOBは、願望が叶った末に現実に引き戻され時、今度は必ず首脳陣批判に走る。結局は歯を食いしばって見守るほどの我慢強さもなく手っ取り早い刺激が欲しいだけ。そんな奴の意見など耳を貸すだけ無駄である。

 

泥臭い勝利

 

そういう意味では今日の勝利は、手早く刺激を欲しがるジャンキーOB達に対するカウンターのような泥臭い内容だった。

もう後がない野手の筆頭格である三ツ俣が二度のグラブトスで魅せれば、6回の最大のピンチは血行障害で苦しんできた岡田が見事な投球で火消しに成功。そもそも先発の阿知羅も今年ダメなら首筋が寒くなる立場の選手で、こういった苦節を経てきた選手達の力でもぎ取った勝利というのもなかなか味わいがあって良いものではないか。

分かりやすい刺激でもってチームの雰囲気を変えたい気持ちは痛いほど理解できるが、「根尾を引っ張り出せ」などというのはあまりにも安易と言わざるを得ない。残念ながら救世主なんて都合のいいものはいないのだ。