ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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俺が藤井だ!

◯13-3(24勝32敗)

 

藤井が一軍に帰ってきた。そしていきなりの大暴れだ。初回の先制につながる安打、そして2回裏の3ランホームラン。大量得点に埋もれがちだが、試合の流れの中でも非常に大きな一発だった。

もう忘れてしまった方も多いだろうから、あらためて状況を振り返ろう。初回、先発の辛島の制球難につけ込んで押し出し四球で先制。だがなおも満塁のチャンスで京田が2-0からフライを打ち上げて三者残塁。今季、幾度となく見てきた“あかんパターン”である。続く2回は先頭・武山のツーベースと柳の犠打がフィルダースチョイスとなり無死一、三塁。しかし遠藤が三球三振を喫し、打席には藤井。

仮にここで無得点なら試合の主導権を一気にイーグルスに持っていかれてもおかしくなかった。何しろ相手は戦国パ・リーグの首位チーム。かたやドラゴンズは5連敗中。がっぷり四つを組んだら押し切られるのは目に見えているし、取れるべき時に取っておかないと後々痛い目に遭うのもイヤというほど知っている。だからこの場面でホームランを、しかも満を持して昇格した藤井が打ったというのはチームにとっても本当に意味があった。チームを覆っていた暗雲を綺麗さっぱり振り払うような、久々にスカッとするホームランだった。

 

苦境を迎え、緊急昇格か

 

ところで藤井といえば5月28日の東スポで首脳陣との確執が報道されたばかり。オープン戦での二軍降格を巡って首脳陣と揉め、チームの和を重んじる与田監督の怒りを買ったという事らしいが、例えこれが真実だったとしても、藤井に昇格のお呼びがかからなかった事とは無関係だと私は思う。

藤井の代わりに一軍で機会を与えられたのは渡辺や井領といった経験の浅い選手であり、開幕してしばらく松井雅を呼ばなかった事からも分かるように、与田は一貫して「見極め」と「育成」を起用法の軸にしてきた。ある程度力の分かっている選手は後回しにして埋蔵戦力の発掘を優先するという姿勢は、3年契約の初年度を迎える監督としてはごく自然の成り行きである。

そのため藤井のような大ベテランはAクラス争いが佳境を迎える頃か、あるいは夏場、若手に疲労が表れる苦しい時期のために敢えて昇格を見送っているのだろうと踏んでいたのだが、東スポが妙な憶測記事を出してしまった事と、5連敗で借金9という抜き差しならない状況に陥ってしまったため、当初の予定を繰り上げて緊急昇格させたのであろう。

 

男の意地を見た

 

結果的に藤井は満点以上の回答で応えてくれた。ホームランを確信してもニコリともせず、むしろ鬱憤を晴らしたかのようなドヤ顔を見る限り、首脳陣の真意はどうであれ一軍の試合に出られないストレスは相当溜まっていたのだろうし、ホームベースを踏んだ後、「俺が藤井だ!」と言わんばかりのガッツポーズを決め、大島の手を、そしてチームメイトの頭を一人ずつポンポンと叩いていく姿には男の意地のようなものを強く感じた。

そういえば試合後、山﨑武司氏が昨夜藤井からメールを貰った事をTwitterで明かしていたが、今日の藤井の姿はちょうど20年前、あの伝説の一発を放ち、ぐるぐる手を回した後ベンチの星野監督を指差して「どうや!おっさん!俺を使えば打つんじゃ!」と雄叫びをあげた、あの時の山﨑にそっくりだった。