ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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過失

◯5-4(19勝23敗)

 

過失(かしつ)とは、注意義務に違反する状態や不注意をいい、特に民事責任あるいは刑事責任の成立要件としては、違法な結果を認識・予見することができたにもかかわらず、注意を怠って認識・予見しなかった心理状態、あるいは結果の回避が可能だったにもかかわらず、回避するための行為を怠ったことをいう。(Wikipediaより)

 

9回、鈴木博志がマウンドに立った時点でこの試合にもうひと波乱が待ち受けているであろうことは中日ファンの10人に9人くらいが覚悟していたと思う。

それどころか8回にロドリゲスが快投を披露している最中も心のどこかで「でも9回鈴木だからなあ……」と胃が痛み始めていたファンも少なくないだろう。

先日「プライド」というエントリーで書いたように、今の鈴木にはクローザーとしての信頼など皆無。かろうじてセーブこそ付いているが、綱渡りのような投球がいつまでも続くわけもなく、いつか痛い目にあうのは容易に予見できる。昨季のように他のリリーフも総倒れならともかく、今年はライデルとロドリゲスという優秀な二枚看板がいるわけで、鈴木が復調するまでの一時的なものという前提条件を付けた上で配置転換すべきではないかと私は考えている。

 

というか、今の鈴木をホイホイと9回のマウンドに送り出すのは、もはや過失だと思うぞ

 

与田、マウンドへ出向く

 

数球の投球練習を終え、お馴染みの構えをとる鈴木。この回のポイントは、3人目にまわる坂本までにランナーをためないことだ。立ちはだかる最初の壁は代打・大城。大丈夫、大城なら1アウトを取ったようなものだ。だが2球目、内角の速球をすくい上げた打球はライトスタンドに吸い込まれていく。

あっという間に8回裏に味方がもぎ取った1点が無に帰す。事実上、最少リードで9回表を迎えたも同然。無死から阿部、坂本、丸、岡本から3アウトを取って1点を守りきるというSランクの高難度ミッションの始まりだ。おそらくこの時点でテレビやラジオを消したり、アプリを閉じた方もいるだろう。まともな精神状態では見ていられないのはよく分かる。

まずは1人目の阿部。なんとか打ち損じてくれたような当たりで抑えた。ワンアウト。

 

ふははは、期待どおりランナー無しで坂本に回ったぞ

 

やかましいわ

 

案の定、坂本、丸に連続ヒットを浴びて一死一、三塁。やはり、さっさと見切りを付けて笑点でも見た方が正解だったのか。高鳴る鼓動、震える手足ーー。

その時だった。与田監督がマウンドに歩み寄り、時間をかけて鈴木と内野陣に何かを伝えたのだ。開幕から一貫してこの役目は阿波野コーチが担っていたが、絶体絶命とも言えるこの局面で、就任して初めて与田が直々に投手に気合を注入した。

これで目が覚めたのか、鈴木は初球から迷いなく最大の武器である速球を投げ込み、岡本を注文通りのゲッツーに打ち取った。注文通りと言いつつ、こんな贅沢な注文は誰もしていないはずだ。まさに注文以上の最高の結果。それにしても気になるのは、与田が掛けた言葉だ。青息吐息の鈴木をどんな言葉で立ち直らせたのか。試合後、与田本人が教えてくれた。

“みんなが後ろで守っている。やられるか、打ち取るかの二択なんだから思い切っていってこい”

 

冒頭にも書いたとおり、過失とはあらかじめ予見できる悪い結果に関して、回避するための行為を怠ることをいう。

与田はリリーフの配置転換という回避行為をとらず、リスクを覚悟で鈴木をマウンドに送り出した。その意味では過失にあたるのかもしれない。だが法律の範疇を超えた「言葉の力」が、予見できた未来をも変えてドラゴンズに勝利をもたらしたのだ。

 

あらためて与田の人間力を感じた瞬間だった

 

たった一言で立ち直るなら、最初からしっかりしてくれよとも思うけどな