ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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決め球を捨てた判断力

◯5-2(17勝20敗)

 

清水達也。高卒2年目のプロ初先発でいきなり大観衆の甲子園。しかも味方が2点を先制し、先発としてリードを守らなければいけない状況になった。緊張するなという方が無理だし、ある程度四球を出すことも想定内。しかし清水の決め球であるフォークが全く通用しないのは、おそらく本人も含めて想定外だったに違いない。

変則のアーム投法から繰り出すフォークは2軍では有効で、奪三振率も6.68を記録するなど空振りを取れる武器として機能していた。ところが1軍の打者にはこれが通用しない。糸原、糸井、大山が冷静に見極めて(糸井は高めのフォークを中安打)、たちまち満塁に。この時点で投げる球をなくしてパニックに陥ったであろう清水は、福留に対してフルカウントから真ん中付近に速球を投じて同点打を浴びた。当然の結果である。

生命線であるフォークが通用せず、いきなりリードを吐き出してしまった19歳が、それでも最終的には5イニングを投げきり初勝利まで手にできたのは、ずばり臨機応変に配球を切り替えた加藤のナイスリードによるところが大きい。

 

フォークに早々と見切りをつけた加藤の判断力

 

福留に打たれ、なおも一、二塁で打席には梅野。ここで女房役の加藤は速球とフォークの一辺倒だった配球を改め、2球続けて緩いカーブを要求したのだ。おそらく梅野の頭にはなかった球種だったのだろう。低めのボール球に手を出して中飛に倒れる。さらに続くマルテもカーブを織り交ぜて遊ゴロに打ち取り、なんとか同点で切り抜けた。

ここで、初回を終えた時点での私のツイートを載せておく。

 

初回こそ目先を変えるカーブが効いて梅野とマルテを抑えられたが、だからと言って清水のカーブが一級品というわけではない。そこを履き違えてカーブを軸にした配球を組んでしまうと痛い目に遭うだろうなと心配したが、幸いなことにこの心配は杞憂に終わる。

2回以降、加藤が配球の軸に選んだのはカーブでもフォークでもなく速球だった。フォークでかわす投球に早々と見切りをつけ、打って変わって最速145キロの速球で押す投球に切り替えると、これが見事にはまった。おそらく阪神の各打者の頭には初回に15球も投げたフォークと、たまに投げるカーブの残像が残っており、それが速球への対応を鈍らせたのだろう。ちなみに本来の決め球であるフォークは2回1球、3回4球、4回2球、5回3球とほぼ目配せ程度にしか使っていない。

普段、鉄砲肩以外のあらゆる面で拙さを露呈することの多い加藤だが、今日のリードは初回の失敗を踏まえた上で相手の裏をかく見事な内容だった。