ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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柳の19球目

◯5-1(16勝20敗)

 

野球というのは、つくづく投手の立ち上がりをいかに攻めるかが肝心なのだなと、あらためて感じた。結果的には8回無失点12奪三振という抜群の結果を残した柳だが、立ち上がりはむしろ苦労しているように思えた。

初回を振り返ろう。簡単に2死を取ったあと、3番糸井に6球粘られた末、叩きつけるようなボール球で歩かせてしまい打席には大山。表の攻撃で幸先よく味方が3点を先取したとはいえ、頭によぎるのは昨夜の逆転劇だ。阪神サイドとしても中日相手の序盤の3点ビハインドなどあってないようなもので、隙あらばいつでも猛攻を仕掛ける気概で立ち向かっていたと思う。

動揺を隠せない柳は大山に対して低めに大きく外れたボール球を2球続けてしまう。バッティングカウントになり、昨夜の再現を期待する満員の甲子園は俄然盛り上がる。こうなると流れは完全に阪神だ。柳の3球目。今度は高めに外れたボール球。ところが前のめりな気持ちが仇となったか、大山の止めたバットの根元に当たり、ボテボテの投ゴロでスリーアウトとなった。見逃せばカウント3-0となり、ネクストサークルには怖い福留が控える。バッテリーも内心「助かった」と思ったはずだ。

投手というのは不思議で、一旦立ち直ると乱調だったのが嘘のように最後までスイスイ投げるもの。今日の柳も初回の記録に残らない苦労を乗り切ってからは本来の投球を取り戻し、ピンチらしいピンチを作ったのは5回の2死二、三塁くらいのもの。終始安定した投球で3勝目をあげた。

もし大山があの3球目を見逃していたら。四球を出して福留に回っていたら。あるいは全く違う展開になっていたかもしれない。不安定な立ち上がりの柳に対し、打ち気にはやるあまり有利なカウントで中途半端なバッティングをしてしまった大山。今日投じた128球のうち、振り返ってみれば初回に投じたこの19球目こそが試合の分水嶺となる一球となった。

 

中日打線よ、それでいいのだ

 

一方、メッセンジャーの立ち上がりをいやらしく攻めたのが中日打線だった。初球を打ち上げた7番の福田を除いて6番までの全員が5球以上を投げさせ、その上で3点を取った。初回だけで35球。37歳のメッセンジャーにとっては厳しい負担だ。

先日も指摘したように、今年の中日打線はとにかく早いカウントから安易に手を出して淡々と打ち取られる場面が目立つ。よく言えば積極性だが、闇雲な積極性は相手を助けることにもなる。球数を投げさせるだけで勝手に調子を崩す投手もいるのだから、どんなベテランでも苦労するという立ち上がりくらいは、せめてよく球を観察して調子を見極めてほしい。今日はそれができていた。明日からはどうなるか。先発投手の立ち上がりの球数は試合を占う上で重要な要素となる。