ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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つなげ、勝利のバトン

◯7-5(11勝8敗)

 

明らかに流れが変わったのは5回だった。

まず先に試合の主導権を握ったのはドラゴンズ。しかし吉見一起が粘り切れない。まるで先週のハイライトを見ているように集中打を浴びてあっという間に1点差。3回で降板し、残り6回を強打のヤクルト打線相手にリリーフで逃げ切れという極めてシビアなミッションが降りかかる。

 

ところが先陣を切った佐藤優がいきなりピンチを作る。ここはビシエドの2度にわたる好判断によりなんとか無失点に抑えるも、これをあと5イニング続けるのかと考えただけで途方に暮れる。まだ1点差で勝っているはずなのに、ドラゴンズは圧倒的な劣勢ムードに立たされてしまった。

5回表。3番手は又吉克樹。やはり1死から雄平にツーベースを打たれ、得点圏にランナーを背負う。だが、ここで問題の場面が訪れた。代打・上田剛史のポテン性の当たりをセカンド・堂上直倫が好捕し、飛び出していたランナーを間一髪で刺しダブルプレー成立。誰もがそう思った次の瞬間……いや、正確には二塁審判が状況に気付くまでの一呼吸を挟むので、「次のぉ……瞬間」くらいの間があったか。

とにかく明らかに一塁方向をよそ見していた今岡塁審がふと前を見ると京田が何やらアピールをしており、ランナーの雄平は手を横に広げてセーフを主張している。授業中、ボーッとしていたらいきなり当てられてハッとする、あの感じ。「すみません!聞いてませんでした!」と言える生徒は正直者。だが今岡塁審は残念ながら不真面目な生徒だったようだ。

“なんだか分からないけど……とりあえずセーフ!”

ベンチから与田監督が飛び出してくる。普段は温厚な与田が、怒気を含んだ表情で迫ってくる。

“お前見てたのか!?なあ!見てたのか!?”

見てませんでした、とは言えない。なぜなら審判には威厳があるから。ましてや、よそ見してましたなんて言ったら大変なことになる。

結局、リクエストをするように促された与田はそれを承諾し、当然のように判定は覆ってダブルプレー成立でチェンジ。危うく誤審で大変なことになりかねない場面、なんとか難を逃れた。

 

ちょっと前までならこんなのでも判定が覆らなかったんだからたまんないな

 

与田の怒り顔は完全に亜大時代に戻ってたぞ……

 

就任以来、初めて“怒”の感情を表立って見せた与田の心意気がチームを蘇生させた。ここからも毎イニング苦しい展開が続いたものの、前半のような劣勢ムードはもう無い。なんとしても逃げ切るんだ。なんとしても勝つんだ。監督の想いがチーム全体に伝播したように、リリーフ陣が勝利のバトンを必死でつなぎ、野手も5回と7回に1点ずつ追加点を取って引き離す。

終わってみれば失点はロドリゲスが荒木貴裕に浴びたソロホームランの1点のみ。最後は昨日やられた鈴木博志が天敵のバレンティンに対して真っ向勝負で立ち向かってゲームセット。3時間49分の死闘を監督を含めた全員野球で物にし、再び貯金は今季最多タイの3となった。