ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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2死満塁の明暗

●3-5(10勝8敗)

 

惜しくも競り負けたものの、ギリギリまで追い詰めた執念は大したものだ。何しろ淡々と負けるのではなく、相手の勝ちパターンを引きずり出したのだ。長丁場をトータルで見たときにはこういう地道な粘りが効いてくる。

“今年のドラゴンズはめんどくさいぞ”

相手にそう思わせることが今の時期は大切なのだ。

 

未だに開幕戦を除いて4点以上離された敗戦がないんだよね

 

今年は負け試合でもただじゃ転ばないぞという執念を強く感じるぞ

 

五十嵐亮太、プロ22年熟練の味わい

 

明暗を分けたのは終盤、両軍に訪れた2死満塁の決定機だった。三振に倒れた福田永将に対し、タイムリーを打った雄平。もちろん結果論でモノを語るつもりはない。あの場面で切り札の福田を代打に送ったのは間違いではないし、9回に鈴木博志を使ったのも後攻めの利を考えればセオリー通りだ。相手も抑える気満々でマウンドに立ち、あるいは打つ気満々でバットを構えている以上、良い結果にも悪い結果にも転ぶのは仕方のないこと。何ならほとんどクジ引きのようなもので、あそこで福田が打っていたら、鈴木が抑えていたらーーなどと嘆いたってしょうがないのだ。

 

感心したのは、福田が三振した打席の相手バッテリーの攻め方だ。誰もが知る通り福田は低めの変化球に釣られる癖を持つため、フォークを得意とする五十嵐亮太は当然そこを突いてくるものだと思っていたし、福田本人もそれを意識して打席に立っていたはずだ。おそらく狙い球は高めのストレート。腰より低めは端(はな)から捨てていた可能性もある。

ところが百戦錬磨の五十嵐はそれを逆手にとった。暴投や押し出しを避けるためという意図もあるのだろうが、この打席で五十嵐が投じた4球はすべて高め。腰より低い球は振らないように意識している福田は、逆に高めに来た球はむやみに手を出してしまう。勝負が決した4球目、ハーフスイングを取られたあの中途半端なバットの出し方など、明らかに意識が先走って身体を制御できなかった反応の仕方だ。

低めに弱点を持つ打者だからこそ、敢えて狙っている高めで釣るというベテランらしい配球術には、かつてロケットボーイズと呼ばれた無鉄砲さはもうない。一方で鈴木博志は152キロの渾身のストレートを弾き返され、万事休す。

明暗を分けた2死満塁での投球は、どちらが正しいとは一概には言えないものだ。勝負はいつでも紙一重の差で決まる。だが今日に関して言えば紙一重の中に、プロ22年熟練の味わいが凝縮されていた。