ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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競争

◯10-2(7勝6敗)

 

イビチャ・オシム監督がサッカー日本代表を率いていた当時、チーム内の雰囲気が非常に良い理由を問われ、このように答えている。

“矛盾するようだが、私はチーム内のフェアな競争が、その平和的な雰囲気をもたらしたのだと考えている”

ひとつのポジションを同じチームの複数人の選手で争えば、誰かが割りを食うことになる。普通に考えれば競争はチーム内に軋轢を生みそうなものだが、オシムジャパンでは不思議なことに競争こそがチームの活気に繋がったというのだ。

そして、これと同じことが今のドラゴンズでも起きている。京田陽太と堂上直倫。今日、衝撃的な満塁アーチの競演を果たしたこの2人もまさに今、競争の最中で切磋琢磨し合っている。

 

ライバル物語

 

入団から2年連続で規定打席に立ち、色々と課題を抱えながらも不動のレギュラーの地位を確立した京田は、背番号が1に変更となった昨年オフ、2019年の目標として全試合フル出場を掲げた。本人も自信があったのだろうし、実質的にはライバルも見当たらないため怪我さえなければショートは京田だと考えるのは当然のことだ。

一方で堂上は3球団競合の末に入団して早13年目を迎え、年齢も30歳を迎えた。かろうじて規定打席に立ったのは2016年の1シーズンのみ。近年は守備固めでの起用がほとんどで、昨年は怪我をしているわけでもないのに前半戦は2軍暮らしが続いた。結局74試合出場に留まり打席もわずか56。打力重視のオーダーを組むためセカンドを高橋が、サードを福田が守るようになり、堂上がここからレギュラーを奪う可能性は限りなくゼロになった、と誰もが思っていた。

 

ところが与田監督はこの2人を焚きつけた。慢心もあってか自身の早打ちのスタイルを変える気はないと豪語し、オープン戦ではイージーミスや3球三振が目に余っていた京田を途中交代するなど特別扱いしない方針を明確に打ち出してみせた。開幕戦、スターティングオーダーの中に京田の名は無く、代わりにショートを守ったのは堂上だった。

あぁ、この監督は年齢や実績に捉われず、本当にその時の状態をみてメンバーを選ぶんだな、と。そのとき新監督の覚悟を垣間見たのは我々ファン以上に選手たち自身だったようだ。

その日からレギュラー陣はその座を譲るものかと今まで以上に頼もしいバッティングを見せてくれているし、頑張れば試合に出られるという希望を持った控え選手たちも目の色を変えて野球に取り組んでいるのがよく伝わってくる。

昨日、欠場の平田に代わって急遽スタメンに抜擢され、いきなり勝利に貢献した遠藤。去年は1軍出場ゼロながら今年は開幕から正捕手を務める加藤。そして堂上と京田も、皆フェアな競争をくぐり抜けてきた選手たちだ。

決して厚いとは言いがたい選手層だが、それでも競争を促せば選手は努力し、その緊張感が潤滑油となってチーム全体に良い影響が波及する。固定をやめ、競争原理を持ち込んだ与田監督のタクトによってチームは3年ぶりの貯金生活に突入した。