ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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100点満点中の120点

◯3-1(4勝5敗)

 

一昨日、昨日と神宮球場ならではの泥試合に引きずり込まれ、登録しているリリーフ全員を消耗してしまったドラゴンズのブルペン。目下ナンバーワンの安定感を誇るロドリゲスは昨日で3連投となるため今日は事実上の休養日であり、谷元、田島も2連投中とあって出来る限り休ませたい。

そんなわけで、今日の試合のテーマは先発の柳裕也に出来るだけ長いイニングを食ってもらう事。極端な話、それさえ遂行できれば勝敗は二の次と言っても過言ではなく、なんなら10失点を喫しても最低7回までは投げてもらわなくては困るとさえ思っていた。

 

今日も先発が早い回で降板する流れになったら開幕9試合目にしてブルペンは崩壊してしまう

 

だけど柳が長いイニングを放る姿なんて正直想像できなかったよな

 

スケールダウンした柳の直球

 

想像できないのも仕方あるまい。昨年、10度の先発登板で7イニング以上投げたのは4月10日のヤクルト戦(9回=完封)と5月16日の広島戦(7回1/3=2失点)の2回だけ。平均投球イニング数は5回で、ビジターに至っては4試合15回1/3 防御率10.57という惨憺たる成績を残している。少なくとも昨年の柳ならほぼ確実に序盤でマウンドを降りていただろう。

ただ大学時代の柳を知る人達は皆、口をそろえてこう漏らした。“こんなの柳じゃない”と。確かに大学時代の柳は最速150キロの直球と落差の大きいカーブを武器に三振を奪いまくる投球スタイルでチームをリーグ戦春秋連覇に導くなど大車輪の活躍をみせ、すぐにでもプロで通用する逸材だと誰もが信じて疑わなかった。

だがプロの門を叩いた背番号17の投げるボールは、大学時代から明らかにスケールダウンしていた。直球は120〜130キロ台に留まり、昨年は1試合を通じて140キロ台が出ない事もしばしばあった。サウスポーならまだしも、オーソドックスなフォームの右腕がこれでは幾ら変化球の曲がりが良くてもムリがある。案の定、日ごろから160キロ近い豪速球を見慣れている各球団の猛者には通用せず、2年目にして柳は早くも崖っぷちに立たされてしまった。

 

転機になったルール改訂

 

「悔しいというよりは情けないほうが強い」。プロ2年間をこう総括した柳は、雪辱を期す3年目の今季に向けて大きな変化を取り入れた。2段モーションの導入である。昨年から公認野球規則の改訂により12年ぶりに解禁された“幻惑投法”はゆったり構えるフォームとの相性がよく、例えばカープの大瀬良大地はこのルール改訂を機に大きく成績を伸ばした投手の代表格だ。

秋季キャンプから阿波野コーチと二人三脚で新フォームを固め、今季初登板となった3月31日のDeNA戦では6回2失点とまずまずの投球。何よりも昨季はなかなか出なかった140キロ台を連発し、最速球速も昨季のそれ(143キロ)を上回る144キロを計測。大学時代ほどではないにせよ、柳のボールの威力は確実に本来のものに戻りつつある。

 

紫紺のエース、帰還

 

そうして迎えた今日の試合。前述の通り結果だけではなくチームのためにも出来るだけ長いイニングを投げる事が義務付けられた難しい状況で、紫紺のエースが遂によみがえった。球速は前回と同じく最速144キロ、印象の強いカーブは見せ球程度で、投球の軸は130キロ台のスライダー。とにかく丁寧に丁寧に丁寧に、なおかつ無駄な四球を与えないように早いカウントから勝負に行っているように見えた。これが奏功したのか、どこからでも点が取れる猛打のヤクルト打線が微妙に狙いを外されてゴロの山を築く。

終わってみれば8回120球3安打1失点。2人以上走者を背負う場面すら作らせず、クローザー鈴木博志に直通でバトンを渡した。チーム事情を考えれば100点満点中120点と言っても大袈裟ではないほどの見事な快投。大学時代、幾多の栄誉を手にした思い出のマウンドで、柳にとってもチームにとっても大きな1勝を勝ち取った。