●2-3(1勝2敗)
1990年代後半から2000年代にかけてユヴェントスやACミランで活躍したフィリッポ・インザーギというイタリア出身のサッカー選手がいる。ロマーリオやロナウド、ドログバ、メッシといった歴史に名を残すストライカー達と比べればドリブルやパスの技術は明らかに劣るし、フェイントで相手を交わして華麗なシュートを決めるなんて事は滅多にやらない。
それでもインザーギが代表含めて通算312ゴールを決めた伝説的な選手として語られるのは、他の選手にはない彼だけが持つ特殊な能力、すなわちボールが来る位置を予知できているとしか思えないほど絶妙なポジショニングによるところが大きい。
往年の名選手ヨハン・クライフが“彼はサッカーをまったくしていない。ただ常に的を射た場所にいるだけだ”と評すれば、ドイツ代表レジェンドのゲルト・ミュラーは“彼がしている事の全てはゴールを決めることだ”と語る。さらにインザーギという選手を最も端的に表したのがジョン・カビラ氏の有名なこの実況だろう。
“なんでいつもそこにいるんだ⁉︎インザーギ!”
なんでそこにいるんだ柴田
7回2死満塁。打席にはビシエド。三嶋の投じた3球目の変化球を空振りしたかのように見えたが、かろうじてバットにかすっておりファールに。一旦マウンドを降りかけた三嶋は平静を装って再びプレートを踏む。仕切り直しの4球目、ビシエドの当たりは三嶋の頭上をワンバンで通過し、センターへと抜けていく。
やった、勝ち越しタイムリーだ!誰もがそう思った次の瞬間、なんと本来いるはずのない場所に二塁手の柴田が待ち構えており、タイムリーと思われた打球は無情にも平凡な二塁ゴロとして処理されてしまった。目の前に広がった光が一瞬にして暗闇に閉ざされてしまうような失望感。一体何が起こったというのか?
クサすわけではないが、菊池や吉川尚のような驚異的な守備範囲が柴田にあるとは思えない。ではなぜ柴田はビシエドの打球方向をまるで予知していたかのように絶妙な場所に守っていたのか。答えはひとつ。ビシエドシフトを敷いていたのである。
実は開幕初戦から一貫してベイスターズはビシエドが打席に立った時には一、二塁をガラ空きにして二塁手がほぼ二塁ベース上にポジションを移動するという極端なシフトを敷き続けていたのだ。
科学的見地から野球の楽しさを紹介してくれる人気ツイッタラーのやきうのおじさん(@yakiunoojisan)作成の以下の図を見てもこのシフトが効果的なのは明らかで、今後ビシエドは何らかの対策を取らなければ同じような目に遭い続ける事になるだろう。
昨日横浜の対ビシエドと対平田シフトが話題になっているので、動的に表現してみた
— やきうのおじさん (@yakiunoojisan) 2019年3月30日
ビシエドはおじさん計算によると引っ張りとセンターのライナーとゴロ+全フライで打球の85%くらい占めるから、めちゃくちゃ合理的だと思う。 pic.twitter.com/qhRaqm0pBI
首位打者になるって、つまりこういう事だよね
これを受けて今後ビシエドが意識的に狙いを変えるのか、あるいはシフトに引っかかり続けるか。今季はビシエドの打球方向にも要注目だ