ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

15本塁打に王手〜良くも悪くもビシエド

●3-8DeNA(22回戦:横浜スタジアム)

 昔ティモンズという外国人がいた。オジー・ティモンズ。5位に終わった2001年はドラゴンズの球団史でも語られることが滅多にないシーズンなので、あまり知名度の高くない選手に分類されるだろう。

 前年まで在籍したゴメスの後釜として期待され、開幕戦には「4番・レフト」で出場。しかし2週間足らずで7番に降格するなど星野監督の信頼を失い、後半戦に入ると出場機会すら与えられなくなった。いわゆる “ハズレ助っ人” の一人である。打率2割台前半、12本塁打では4番と目された外国人としては寂しい数字ではあるが、このレベルの選手でさえ今のドラゴンズなら余裕でクリーンアップを任せられるし、おそらく契約延長ということになるだろう。

 1990年代から2000年代にかけての球界は、空前の助っ人好況に沸いた時期だった。1億円以上の契約金で獲得した外国人のノルマは本塁打30発に設定され、15〜20発程度ではハズレ扱いされるケースもめずらしくなかった。

 '96年に中日に在籍したコールズという三塁手は29本塁打を打ちながら、失策の多さが問題視されて一年かぎりでリリースされている。翌年からナゴヤドーム移転が控えていたとはいえ、現在の価値観からすれば信じられないほど贅沢だ。

 ところが昨今はメジャーとの年俸格差の拡大をはじめとした諸々の事情から優良選手の来日が減る傾向にあり、今後は円安の影響でますます札束攻勢での外国人獲得が困難になることが予想される。ヤクルトの連覇に貢献したサンタナとオスナ、広島のマクブルームも昔の感覚なら合格とは言い難いラインだが、現状彼らよりも打っている外国人は両リーグ見渡しても巨人のポランコ、ウォーカーしかいないという状況だ。

 ちょっと前まで本塁打王争いトップ5のうち3,4人を外国勢が占めるのが当たり前だったが、今年はポランコが24発でかろうじて4位(同率)に入っているのみ。もしかすると今後、“当たり助っ人” のボーダーラインは「20発」に引き下げられていくのかもしれない。そうなるとディオニス・セサルも時を経て再評価されるのでは? と思い調べてみたら、思ったよりもひどい成績で目眩がした。

来季も4番はビシエドか

 ところで来日7年目を終えようとしているビシエドの評価はどうなるのか。竜のヒットメーカー・岡林勇希よりも打率は高く、今夜の14号で7年連続15発以上に王手をかけた。打点58は4番打者としてはいささか寂しさを覚えるが、総合的にみれば及第点ではあるだろう。

 大型契約によるコスパの問題がたびたび指摘されるが、前述したように助っ人市場は枯渇しており、ビシエド以下の選手を引かされるリスクを思えば、安定して2割8分・15発をクリアするビシエドは貴重な存在であることに間違いはない。しかし勝負どころの8月に本塁打ゼロという大不振に陥った責任は重く、今季のビシエドの働きぶりに満足しているファンはおそらく皆無だろう。

 それでも立浪監督はごく一時期を除いてシーズンの大半でビシエドを4番に据え続け、「ビシエドが打てば勝ち、打たねば負ける」という試合を延々と繰り返した。他にいない、と言ってしまえば身も蓋もないが、たびたびコメントに出てきた「なんとかキッカケを掴んでほしい」といったニュアンスからして、おそらくは来季を見据えての起用でもあったはずだ。

 オフのリリースが半ば決定的だったティモンズとは異なり、複数年契約のビシエドは来季も在籍することが確定しているのだ。加えて円安によるコスト上昇で新外国人獲得も期待薄とあっては、ビシエドに頼らざるを得ないのも無理からぬことだ。

 来季の開幕戦も、やはり4番にはビシエドが座ることになるのだろうか。ビシエドが6番を打つようなチームになれば一気に強くなるのだが……。貧乏が憎い。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter