ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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三振45% 本塁打5%〜だから石垣雅海はおもしろい

○3-2DeNA(21回戦:バンテリンドーム)

 日々辛辣なバッシングを受け続ける立浪監督だが、若手の積極起用に関しては素直に評価すべき点だろう。誰が監督でも頭角を表していたであろう天才・岡林勇希は別として、土田龍空がショートで50試合近く先発出場という状況は、思い切りのいい立浪でなければ難しかったのではなかろうか。

 怪我が惜しまれるが、石川昂弥と鵜飼航丞の起用も明確な意志を感じるものだったし、二軍暮らしが長かった石橋康太を二番手捕手まで引き上げたのも貴重な功績だ。そしてこの日久々に先発出場した石垣雅海もまた優先的にチャンスを与えられた選手の一人である。

 昨年までの最多出場は2020年の25試合だったが、今年はこれを大きく上回る41試合に出場。しかし必ずしも期待に応えられているとは言えず、打率は未だ1割台と低迷を極める。安定した二塁手が他にいないというお家事情はあるにせよ、成績だけみれば一軍の試合に出られるのが不思議なくらいだ。

 それでも石垣が打席に立つと、なにか他の若手選手とは違った期待を募らせてしまうのは私だけではないはずだ。かつての強竜打線を彷彿させる、荒削りながら豪快な打撃。非力な野手が多いチームにあって、当たればどこまでも飛んでいきそうなパワフルな打球は無二の武器といえよう。

5%の大当たり

 ただし、滅多に当たらない。三振率は驚異の45%(60打数27三振)を叩き出す。プロ野球史上、唯一のシーズン200三振を誇る元近鉄・ブライアントは'90年に三振率48%という金字塔を打ち立てたが、それと引き換えに本塁打も29本かっ飛ばした。前年には49発でタイトルも獲得しており、対戦した投手は心底ビビりながら慎重に勝負していたに違いない。

 一方で現状の石垣は、単に三振が多いだけの打者だ。パワプロで「弱い」モードのCPUを相手にするように、追い込みさえすればこれほど打ち取りやすい打者もいないだろう。

 ただ、稀に芯を食うとたちまち打球はスタンドを超えていく。バンテリンドームのフェンスの高さもお構いなしだ。あまりにも確率が低いのが玉に瑕だが、これがあるから首脳陣も石垣を使うし、ファンもその打棒につい期待してしまうのだ。たとえハズレだらけでも5%(60打数3本塁打)の確率でアタリが出るなら、つい賭けてしまうのが人情というものだ。

 5%というと、夏祭りのテキ屋でプレステ5やswitchが当たる確率よりは高くて、商店街のクジ引きのペア温泉旅行プレゼントよりは少し低いくらいだろうか。つまり今夜の石垣は、後者を引き当てたというわけだ。1点ビハインドの5回裏、喉から手が出るほど欲しかった一発が左中間スタンドの最前列に飛び込んだ。最前列とはいえバックスクリーン寄りの深いところである。打撃練習でもあそこまで飛ばせる選手がチームにどれだけいるだろうか。

 単打を繋いでなんとかもぎ取れるかどうかという1点を一振りで取ってしまうのだから、やはり本塁打は偉大だ。その後の2打席は絵に描いたような空振り三振だったが、とりあえず目をつむろう。

 そのあたりは本人も分かっているようで、お立ち台では「いつも三振ばかりして “うわぁ” となってると思いますが、少しでも本塁打を打てるように頑張ります」と頼もしい言葉を残してくれた。ちなみに3本塁打はすべてバンテリンで打ったもの。欠点をあげればキリがないが、このパワーは使わない手はないだろう。

木俣はようやっとる (@kimata23) / Twitter