ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

じれったい年頃

●0-1阪神(17回戦)

 台風接近に伴い、中止となった昨日の阪神戦。試合がなかった翌日の中日スポーツにはドラフト会議の話題が上った。本塁打数がリーグ最下位に沈む球団の関心は、大学球界を代表する強打者にあるようだ。

 だがシーズンが終わったわけではない。選手たちは目の前の試合に集中するだけだ。

圧巻

 10連戦改め、9連戦の初戦はドラゴンズ・大野雄大と阪神・髙橋遥人、両左腕の先発で始まった。大黒柱が登板するだけに、ドラゴンズとしては是が非でも落としたくない試合。しかし対戦相手の投手を聞いた瞬間、嫌な予感がした。

 実のところ、髙橋とドラゴンズには浅からぬ因縁がある。きっかけとなったのは、2017年3月の “初登板”。亜細亜大時代のドラゴンズ二軍とのオープン戦まで遡る。幸運なことにこの試合を筆者は目撃することができた。いや、正しくは「亜細亜大の髙橋」がどうしても観たかったのだが。

 相手が二軍とはいえ、プロを相手に6回2安打無失点の好投。与えた四死球は1、奪三振は8と手が付けられなかった。140キロ台中盤のストレートで相手を圧倒し、若竜たちが完膚無きままに打ちのめされたのを思い出す。

 後ろの席のおっちゃんに至っては、「大野(雄大)よりこっちの方がええわ~!」と大きな声で唸っていた。既にチームの主戦格となっていた投手と比較するのは失礼と思ったが、マウンド上で躍動する姿はドラフト上位候補に相応しかったと断言できる。

 あれから4年、雌伏の時を経て迎えた本日はまるでエースの投球内容。背番号と相まって、最後の20勝左腕・井川慶を見ているかのようだった。異なっていたのは襟足の長さだけ。ストレートにスライダー、ツーシーム。何をとっても言うことなし。大島洋平と高橋周平が1安打ずつ放った以外、ドラゴンズ打線は手も足も出なかった。

 一方大野も7回1失点と試合を作った。しかし今日に限っては、あの時のおっちゃんが正しかったようだ。「参りました」。

踏ん張り時

 完封負けを喫した試合で、どうしても気になっていたのが伊藤康祐だ。ちなみに伊藤はこの試合に出場していない。最後に与えられた出番は、代走からセンターの守備に就いた9月14日の広島戦。打席に至っては、9月3日のDeNA戦で犠打を決めて以降立っていない。歯痒い状況が続く中で本日の1面を見て、背番号49は何を感じただろうか。

 見出しには「右の大砲」の文字。しかも名前が挙がった選手はいずれも外野手。その中には高校時代のチームメイトだった鵜飼航丞(駒澤大)もいた。つまり、自身と同学年の選手がいよいよプロの門をたたこうとしている。焦りや不安がないというのは嘘になるにちがいない。

 高卒4年目を迎えた外野手はファームで結果を残し、五輪期間中のエキシビジョンを経て一軍に合流した。中断明け初戦からスタメンに抜擢されたものの、2試合で7打数無安打。翌日以降スタメンに名前が載ることはなくなり、入れ替わるように渡辺勝の台頭を許した。

 伊藤と渡辺は同時期に一軍に昇格した間柄。一緒にいたはずのライバルは遥か遠くに行ってしまい、新たな競争相手が加わるのは時間の問題だ。期待の若手といえども、高卒4年目は一つの節目。成績を残していないと、これまでとは全く異なる状況に陥ってしまうのは球界の常だ。

 特に外野手は打力が不可欠なポジション。歴代の名外野手において、守備と走塁だけでレギュラーを張り続けた選手は限りなく少ない。今シーズン無安打の選手にとってバッティングの向上は必須課題だ。

 一軍帯同を続ける限りは十二分に打席数を提供されることはないだろう。ただし二軍降格となると、他の選手に出し抜かれてしまう危険性がある。ジレンマを抱えながらの日々を送る苦しさは想像に難くない。伊藤自身が今できることは貴重な一軍での出場機会を大切にし、首脳陣の信頼を勝ち取ることだ。処遇については周りが決める。だからこそ外野の声ではなく、ポジション争いに “全集中” しよう。

(k-yad)