ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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苦節7年祖父江、勝利の方程式加入へ

○6-1広島(2回戦)

 続投か、交代かーー。

 結果的には快勝となった今日の試合だが、首脳陣が唯一悩んだ箇所があるとしたら6回表の吉見一起の続投可否だったと思う。状況を振り返ると、吉見は4回にタイムリーで1点を失ったものの余力は残っており、球数も5回終わって75球とまずまず。打順的にも6回裏に投手まで回ることが確定しているため、セオリーで言えばこの回までは続投が妥当ではある。

 ただ、6回表の広島は2番菊池涼介から始まり、絶好調の鈴木誠也との対戦が待ち構える。前の打席では併殺に打ち取ったとはいえ痛烈な当たりを放っており、仮にランナーを出しての対戦となると現状の吉見の力ではどうしても心配が付きまとう。しかし昨日、負け試合にもかかわらずAチームの福敬登を含めて4人のリリーフを使ったため、本音としては吉見続投がベストという場面だ。

 ファンのあいだでも意見が割れる中、与田監督の選択は「吉見交代」、そして「祖父江登板」というものだった。僅差で迎える上位打線との対戦。このシチュエーションで祖父江が選ばれたのは、今もっとも信頼できるリリーフであることの証でもある。

 苦節7年。一貫して便利屋としてチームを下支えしてきた祖父江が、遂に勝ちパターンの筆頭にまで上り詰めたのだ。まるで脇役ひと筋に生きてきた中堅俳優が、地道な下積みの甲斐あっていよいよ初主演の座をつかみ取ったかのようなカタルシス。

 祖父江は今、間違いなくドラゴンズのなかでいちばん“キテる”選手である。

 

イケメンランキング9位

 

 開幕当日、主婦向け情報番組「ヒルナンデス」(日テレ)で発表された「20~40代女性に聞いたカッコいいと思う現役プロ野球選手」という企画で、坂本勇人や小林誠司らに混じって祖父江が9位にランクインするというミラクルが起きた。

 キャラメルのように濃厚な顔立ち、マウンドでの鋭い眼光はファンの間でこそ男前だと話題になることはあったが、全国区の情報番組で突拍子もなくランクインしたのは完全に不意打ちだった。

 するとその夜の開幕戦では、味方が同点に追いついた直後のイニングという試合の流れを左右する重大な局面で登板。ここをみごとに無失点で切り抜けたところから祖父江の今シーズンは始まった。

 昨日までの7試合で早くも4登板とハイペースでマウンドに上がったが、状況はいずれも同点かビハインド。無論これはリードして中盤以降を迎えるシチュエーションがチームとしてまだ一度しかないので仕方あるまいが、少なくとも祖父江が勝ちパターンに組み込まれていないことは明らかだった。

 

勝利の方程式の一角

 

 しかし今日は違う。まさしくチームの勝利を確実なものにするための、方程式の一角としての登板だ。鈴木誠に対して過去2年間、7打数1安打(打率.143)と相性がいいのも考慮されたのだろう。

 だが以前から祖父江には「僅差の展開に弱い」という指摘があるように、気楽な場面でのみ力を発揮するタイプの投手だ。要するにプレッシャーに弱いわけで、昨日までの安定感がウソのように萎縮した投球になる恐れもある。

 ベンチも100パーセント信頼して送り出したかと言えば、どこかで不安を感じていたとは思うが、いざマウンドに上がった祖父江の投球は期待を遥かに上回る素晴らしいものだった。わずか6球で菊池、西川龍馬のうるさい2、3番を片付けると、鈴木誠には初球、外角のスライダーを引っかけさせてスリーアウト。

 この試合のターニングポイントをいとも簡単に切り抜け、何事もなかったかのように颯爽とベンチに戻る姿は、まるで長瀬智也かと見紛うほどのワイルドさに満ちていた。その割に足が短いので「ああ、なんだ祖父江か」とすぐに分かったが、この調子なら年俸も今年は適正価格まで上がりそうでひと安心だ。よかったね、ダルビッシュ。