ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

新庄剛志獲得は「アリ」か「ナシ」か

www.chunichi.co.jp

 現役復帰を目指している元阪神、大リーグ、日本ハムで活躍した新庄剛志氏(48)が6日、自身のインスタグラムを更新。元中日の川上憲伸氏が現役復帰を称賛したことに関して、コメントを寄せた。
 「川上君オールスターで協力してくれてあがとう 感謝します 中日に来てくださいって僕に言っているのかい」
 川上氏は本紙の「野球ファンに届ける 本紙評論家リレーコラム」の中で新庄氏の現役復帰に賛同。「ボク個人の意見では大賛成。新型コロナウイルスの影響で開幕すら危ぶまれている状況の中、新庄さんが日本球界に復帰すれば、その盛り上がりはすさまじいものになるのではないだろうか」と見解を示していた。

 

 兼ねてからプロ野球復帰を目指すことを表明している新庄に関し、川上のラブコールとも取れる発言に新庄が反応を示したと、中日スポーツが報じた。

 とはいえ川上のリップサービスにお調子者の新庄が応じたに過ぎず、真剣に受け取るのもどうかと思うのだが、他に目立った話題もないのでこの件について少し考えてようと思う。

 

新庄獲得は「アリ」か「ナシ」か

 

 現時点で新庄の中日復帰が「アリ」か「ナシ」かでいえば、100%に近い確率で「ナシ」と言い切れる

 そもそも48歳という高齢に加え、現役を退いて13年が経過し、しかもその間それといったトレーニングを行なっておらず、趣味レベルであっても野球に興じている様子もなかったのだ。いくらかつてのスターとはいえ、この選手のために貴重な登録枠を一つ潰すのは他の選手に示しがつかないだろう。

 しかし新庄が7日未明に配信したインスタライブでは日ハム時代の愛弟子・森本稀哲氏が提唱した育成契約で2軍から這い上がるストーリーに「それが一番おもしろいよ」と賛同。仮にプロ復帰となってもいきなり支配下登録ではなく、球団にとってもリスクの少ない育成契約という形になりそうだ。

 

第2の松坂を狙うなら「アリ」

 

 それを含めても、やはり今の中日は新庄を獲らないと思う。「今の」と前置きしたのは、森繁和監督の前政権なら獲得の可能性がもう少し高かったと思うからだ。

 ご存知のように森監督は周囲の反対を押し切って松坂大輔を獲得し、結果として球団に莫大な収益をもたらした。戦力としては1年目こそ6勝をあげたものの、2年目の昨季は故障が響いて未勝利に終わった。それでもこの獲得が成功といわれるのは、グッズ売り上げを主とした経営的なプラス面が想像を遥かに上回ったからに他ならない。

 プロ野球が興行である以上、親会社が利益を求めるのは当然のことだ。川上氏の言うとおり、たとえ育成契約であったとしても新庄入団がもたらす経済効果は計り知れない。ただでさえ開幕の見通しが立たず、大幅な減収減益は避けられそうにもない現状において、億単位の収益を叩き出してくれる打ち出の小槌が400万円前後の出費(年俸)で手に入るのだ。

 話題づくりを好む監督やオーナーなら、多少のリスクは承知のうえで二匹目のどじょうならぬ“第2の松坂”狙いで獲りに行ってもおかしくはない。

 

堅実な与田だから「ナシ」

 

 それでは「今の」中日はどうだろうか。中日というより、与田監督と言うべきか。監督としての与田は極めて堅実かつ現実的なタイプである。特に補強に関しては、就任2年間で他球団から獲得した選手はゼロ。2018年オフには地元出身でソフトバンクを戦力外になった城所龍磨にも手を出さず、一貫してドラフト入団組と外国人の補強のみでチーム改革を進めている。

 そもそも人寄せパンダを雇いたいなら阪神を退団した鳥谷敬の獲得に乗り出していたはずだ。交渉過程で決裂したならともかく、調査の噂すらも立たなかったのだから、当初から与田は鳥谷を獲る気などさらさら無かったのだろう。それが今になって、鳥谷とは比べものにならないほど未知数も未知数の新庄になびくとは到底思えない。

 可能性があるとすれば、与田が現役時代の最晩年に在籍した阪神で新庄とよほど意気投合でもしていれば別だが、著書を読んでも新庄に関する記述など1行も出てこないところを見ると、どうやらその見込みも薄そうだ。

 

戦力としても「ナシ」

 

 ある意味、もっとも重要ともいえる戦力面で考えても、やはり獲得は難しいと言わざるを得ない。

 新庄の定位置であるセンターには大島洋平が鎮座しており、今後の展望としては30代半ばの大島の次代を担う候補として根尾昂岡林勇希が期待されている。そこにきて、わざわざ方針に逆行するかのように48歳の選手を使うのは無理がある。

 また外野手の控えには井領雅貴渡辺勝遠藤一星といった、与田が就任当初から積極的に起用してきた中堅どころが揃っており、彼らのチャンスを奪ってまで新庄を使うとは思えない。落合監督なら「新庄よりうまいやつがウチにいるか?」とかなんとか言って使いそうな気もするが、堅実な与田はそういうことはしないだろう。

 

教育係としてなら「大アリ」

 

 そもそも実力的にも、いくら元々の身体能力が別格とはいえ、引退後13年間のブランクはあまりに大きすぎる。普通に考えれば「ナシ」に決まっているのだが、ただひとつ新庄にしかできない役割があるとすれば、それは若手の教育係であろう。

 YouTubeの公式チャンネルでダルビッシュが語っていたが、入団当時の生意気なダルビッシュに対してほとんどの先輩選手が辛辣に当たるなか、数少ない優しく接した先輩の一人が新庄だったという。早くからその実力を見抜いた新庄は、服装にもこだわらずジャージ姿でスポーツバッグを提げて移動していたダルビッシュに高級ブランドのキャリーバッグをプレゼントするなどし、スターとはなんたるかを教え込んだのだという。

 今のドラゴンズには根尾石川昂弥など将来を担うべきスターは多数いるが、こういったメンタル面での真髄を教えられる先輩選手は少ないように思う。後輩の面倒見がいい大島、平田良介の主戦場は1軍なので、密に接する機会はオフの自主トレ期間くらい。もし2軍に新庄という大きな存在がいれば、若手に与える影響は計り知れないものがある。

 

結論としては……

 

 現時点では限りなく「ナシ」寄りの“中日・新庄”誕生。しかし、1軍起用保証といった妙な契約はせず、本当に育成契約で泥にまみれる覚悟があるなら、獲ってみてもおもしろいと個人的には思う。少なくとも一概に否定する気はない。

 特にマジメ一筋な根尾が新庄との出会いによってどう変わるかは興味深いし、この出会いをきっかけにして一気に覚醒するような予感さえある。もちろん今の段階では夢物語だが、中スポがやけにこの話題を積極的に報じているのも気になるところ。

 未だ開幕の目処すら立っていないが、いざ開幕したときに、果たして新庄は何色のユニフォームに袖を通しているのか。これを読んでくださっている皆さんは、青いユニフォームの新庄は「アリ」? それとも「ナシ」?