ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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ある日のドラゴンズ⑦あぁ…楽天にも負けるなんて

 日常から野球が消えて早数週間。本来なら一喜一憂に身悶えつつも幸せな日々を過ごしているはずの春なのに、社会は“緊急事態宣言”だの“首都封鎖”だの物騒な言葉で埋め尽くされてしまった。いつ終わるとも知れない未知なる敵との戦いにいい加減うんざりしている方も少なくないだろう。

 というわけで当ブログでは、少しでも読者の皆様に“日常”を感じて頂きたく、過去の中日ドラゴンズの試合の中からランダムにピックアップした1試合に焦点を当てて振り返ってみたいと思う。

 題して「ある日のドラゴンズ」。誰も憶えていない、なんなら選手本人も憶えていないような、メモリアルでもなんでもない「ある日」の試合を通して、平和の尊さを噛みしめようではないか。

 

2005年5月24日vs楽天1回戦

 

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▲中日スポーツ2005年5月25日1面

 

 この年から導入されたセ・パ交流戦。しかしセ界の頂上を一人旅していた中日が、交流戦に入るやいなやウソみたいに勝てなくなった。当初は5月5日のヤクルト戦で相手投手への暴行を働き、10試合の出場停止処分を課されたT.ウッズの不在が響いていると言われていた。だが戻ってきてもチーム状態は上がらず、ここまでなんと5カード連続で負け越し。満を持してこの日からナゴヤドームで迎えるパ・リーグ最後にして最弱の相手こそが、創設初年度の楽天だった。

 この時点の交流戦成績は中日が4勝11敗で11位。楽天はというと2勝12敗の最下位で、まさに「負けたら恥」のボーナスステージという扱いだった。さすがに楽天には負けないよね、そんな楽観ムードが油断を生んだのか、落合竜はエアポケットにでも入ったかのように攻守ともに精彩を欠いた。

 不吉な予感は試合前からあった。この日の先発が予想されていたのは山本昌だったが、いざマウンドに上がったのはまさかの落合英二。前日には中村武志、関川浩一といったかつての同僚との対戦に意欲を見せていた山本昌が背筋痛で急遽登板を回避したのだ。「いつ先発と言われたか? 16時まで練習していましたからね。それで分かってください。周りを見たら先発できるのが僕だけだった」という落合英のコメントが事の慌ただしさを物語っている。

 試合が動いたのは2回表。1死三塁で斉藤秀光のなんでもないサードゴロを森野将彦が弾いてしまい、先制点を献上。さらに同点で迎えた6回表、3番手の石井裕也が無死一、二塁のピンチを背負うと、トレーシーの投ゴロを捕球した石井の二塁への送球が低く、併殺が取れずに1死一、三塁としてしまう。そこから鷹野史寿、斉藤秀に連続タイムリーを打たれて再び引き離されると、ビハインドを跳ね返す力はもう残っていなかった。

 8回裏には無死二塁とチャンスを作るも荒木雅博の投ゴロで代走に出ていた澤井道久が飛び出してしまい三塁タッチアウト。9回裏には4安打を放ちながら1点止まりのちぐはぐな攻撃で格下相手に痛すぎる黒星を喫した。

 最大11あった貯金はわずか半月で3に減り、独走状態だったリーグ順位も3位に転落した。落合監督はおなじみの口ぶりで「前から言っているように知らない相手とやる時は、こういうことがあるってことだ。でも、これで(パ全球団と)ひと通り戦った。これから打つ手はあるよ」と余裕の構えをみせたが、果たして翌日、翌々日に待っていたのはさらに厳しい現実だった--。

 

味わい深い! 落合コメント

 

 翌25日は先発ドミンゴが崩れて連敗。さらに26日は山本昌が5回9失点の大乱調でよもやの楽天戦3タテを喫するとは、いったい誰が想像しただろうか。長いシーズン、スイープを食らうことは決してめずらしくもないが、よりによって創設初年度の楽天が相手とあって強く印象に残っているファンも少なくないだろう。

 何しろ中日スポーツの1面見出しが「楽天にも負けるなんて」である。これがディスりではなく当たり前の感覚として受け入れられるくらい当時の楽天はどうしようもなく弱いチームだったのだ。

 さて、振り返りの最後はやはり落合監督に締めくくってもらおう。まさかの3連敗後、落合は報道陣に対していつもより長めに持論を展開した。15年の時を経て、全編ほぼノーカットでどうぞ。

 

 「この3連戦を見に来たファンはけったくそ悪いわな。でもこのチームが再浮上するには、こういうゲームが必要なんだ。1、2点差で負けるよりもね。

 ロッカールームで泣いているヤツもいる。何でこんなゲームになるんだって、悔しがっているヤツは一杯いたよ。その悔しさがなければ、逆にこのチームは終わり。今年はそういうゲームをやっていなかったけど、去年は5、6試合あった。1、2点差の接戦をものにして、大敗して、その悔しさをバネにして。ベンチを預かる身としては、いい意味での大敗だな。

 もちろんお客さんにとってはそうもいかないだろうけど。一番いい負け。今日負けて変わってくれると思う。すぐ明日、あさってにそれが出る保証はできないけど。

 勝ちの試合で学ぶこともあるけど、負けから何を学び、何を感じ取るか。長くやっているヤツはそれができる。ノホホンとしているヤツは短く終わる。よくぞここまでボロボロに負かしてくれた。楽天さん、ありがとう。

2005.5.26 落合博満 試合後インタビューより

 

なんてコクのあるコメントなんだ……

落合さん、たまに饒舌になるよね

2005.5.24 ●中日2-3楽天