ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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キノタク、勝負のシーズン

 キャンプでは未知数の新人に過剰な期待をしてしまいがちだ。未知数とはつまり期待値の上限も下限も設定されていない状態なので、つい都合よく夢を見がちになるのは仕方あるまい。これが1年経っておおよその能力が把握できると期待値も現実的なラインに落ち着くのだが、この時期は全ての新人選手がすぐにでも一軍で活躍できるような錯覚に陥るものだ。

 今年でいえば、郡司裕也はどうにも期待され過ぎているように感じる。ドラフト時点での評価は佐藤都志也(東洋)、海野隆司(東海)に次ぐ大学ナンバー3。それゆえに4巡目まで残っていたわけだが、指名直後の秋季リーグで三冠王に輝き、さらに神宮大会でも打ちまくってチームを日本一に導いたことで“打てる捕手”、“勝てる捕手”のイメージが刷り込まれ、評価も急上昇した。

 インタビュー等でのクレバーな受け答えも相まって開幕スタメンに推す声もあるが、そこはさすがに諸先輩方に意地を見せて欲しいところ。昨季92試合でマスクを被った加藤匠馬を筆頭に、大野奨太、木下拓哉、石橋康太、桂依央利と“候補者”は揃っている。では現状、誰が一番開幕スタメンに近いのかを考えてみたい。

 

 

昨季実績の加藤、ポテンシャルの木下

 

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▲加藤は打撃でも及第点を取った

 

 この表は昨季の捕手別成績をまとめたものだが、加藤は期待されていなかった打撃面でもライバル達と互角以上の成績を残し、起用されるべくして起用されていたことが分かる。同じ打力なら抑止効果のある“鬼肩”を持つ加藤が優遇されるのは当然だ。

 一方で、持ち味を発揮できず不甲斐ない成績に終わったのが木下だろう。肩、壁性能は及第点、フレーミングはチーム随一とも称され、なおかつ打力も備えた木下は総合力ではナンバーワン。本来なら正捕手の座を確立していないとおかしいほどの逸材だが、昨季はとにかくチャンスを生かせなかった。

 4月5日、初スタメンのヤクルト戦はリードした笠原祥太郎、又吉克樹が相次いで炎上。出足でつまずくと、ようやく2回目のスタメンを掴んだのは3ヶ月も経った7月3日のことだった。この時期、疲労でパフォーマンスを落とした加藤が抹消され、木下が代役を任されることも多かったが、悪夢の8連敗中にマスクを被った5試合中4試合で5失点以上、うち2試合で二桁失点を喫したのが印象を悪くした。結局加藤が一軍復帰した8月4日以降は大野に次ぐ3番手捕手に甘んじ、スタメン起用も激減した(シーズン通してのスタメン出場25試合のうち8月4日以降は8試合)。

 せめて持ち味の打撃で目立った活躍ができれば違ったのだろうが、加藤を下回る打率ではどうしようもない。序列的には加藤の下、大野奨と同等といったところか。今季はここに郡司も加わって熾烈な争いを繰り広げることになるが、もう入団5年目の28歳だ。同じくらいの成績なら若い郡司や、なんなら石橋が優遇されるだろうし、場合によっては二軍の控え捕手にまで格下げになることだってあり得る。だが、ひとたび眠れるポテンシャルが目覚めれば、あるいは正捕手奪取も夢ではない。

 良くも悪くも両極端に振れそうな木下は半年後、果たしてどちらの地位にいるだろうか。