ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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スーパースターデイ

◯10-4(52勝63敗2分)

 

自分でも不思議なくらい何をやってもうまくいく、まるでスーパーマリオのスター状態のような無敵の一日が年に一度、いやもっと低い確率で唐突に訪れることがある。こういう日のことを“スーパースターデイ”と名付けるなら、今日の阿部寿樹は日本でも屈指のド派手なスーパースターデイを過ごした人物であろう。

 

スランプ脱出で再びベストテン入りへ

 

予兆はあった。月初めには3割近くの打率を誇っていた打棒も世間の盆休みに合わせるように鳴りを潜め、一時期はトップテンにもランクインしていたバットマンレースではたちまち下位に転落。13日には久々のスタメン落ちも経験するなど試練の夏を迎えていた。だが昨日の試合で今月初にして今季8度目の猛打賞を記録。9回裏には一時同点に追いついた猛反撃の口火を切る二塁打を放つなど本来の鋭い振りが戻りつつあるのは明らかだった。

そして迎えた今日、阿部はプロ入り以来最高の一日を過ごすことになる。4打点3安打4打点、ホームランを含む3打席連続の打点はインパクト充分。ほぼ満席に埋まった観衆を前にして飄々と「良かったです」を連呼する姿からは、その風貌も相まってベテラン選手のような余裕が漂っていた。

今月半ばには2割7分3厘にまで落ちていた打率も2割8分5厘まで上げ、再びトップテン入りも射程に入った。与田監督曰く「乗ってる男」のスター状態は今日だけで終わりそうにない。

 

データが証明する守備の巧さ

 

あわやサイクルかという打棒にばかり目が行きがちだが、試合全体の流れでいえば7回表に飛び出したファインプレーこそが殊勲だった。楽勝ムードから一転、回またぎの福がつかまりあわや2点差に。なおも一死一塁、打席には松山という場面。後続が中日キラーの安部、會澤であることを考えてもここで切っておきたいところだが、松山らしい“いやらしい打球”が一、二塁間を襲う。しかし阿部はこれを球際で追いつくと、即座に身体を反転させて二塁に転送。松山の鈍足にも助けられてゲッツーが成立し、一打同点の局面を鼻の差ならぬ“グラブの差”で凌いだのであった。

以前も言及したように阿部の守備が「うまい」ことはデータにも裏付けられている。相対評価の守備指標・UZR(二塁手部門)は西武外崎を抜き12球団2位の6.1をマーク。さらに併殺が期待される状況でどれだけ併殺を完成させたかを計る指標・DPRは広島菊池を上回る2.6で同1位に付けるなど、今年の阿部は球界でもトップクラスの二塁手と評して間違いない。

ドラゴンズの二塁手といえば長きにわたり活躍した荒木雅博のイメージが強いが、俊足ではなくても守備は堅実、打ってはシーズン5発をクリアできる程度には長打力のある阿部は今までドラゴンズにはいなかった新しいタイプの二塁手像と言えるかもしれない。惜しむらくは遅きに失した感のある年齢だが、和田一浩のような例もあるのだ。ファンにも愛される“マスター”の伝説はまだ始まったばかりだ。