ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

MENU

忖度なんかクソくらえだ

●3-4(41勝45敗)

 

プロ野球は色々な立場の選手たちによる1対1のガチンコ勝負が見られることが最大の魅力だと思う。社会に出ると、どうしたって年齢や役職などあれやこれやのしがらみに縛られてしまい、誰もが対等なんてことは、まあ普通はあり得ない。立場が上の人に対しては当然のごとく本音など言えるわけもなく、お世辞と作り笑顔でその場を凌ぐというイヤらしいテクニックばかりが上達するばかりか、そういうことが上手にできる人間ほど出世するというしょうもなさ。例えば会議では新人がどんなに良い提案をしようと鼻にもかけないくせに、権力のある人間が言うことに対しては殊更大げさに頷き、なんなら「ですよね。それで行きましょう」などとあっさり決まってしまう“いい加減さ”。こういう場面に出くわすと、世の中案外テキトーに回っているのだなと実感するものだ。

だがプロ野球は、少なくともグラウンドの中ではどの選手も対等の立場で勝負することが許される。年俸400万円の無名選手と10億円のスーパースターが18.44メートルの空間を通してお互いの意地をぶつけ合うスリリングさ。もちろんそこに忖度など存在せず、実力こそが全てになる。

 

なかには変化球で三振したことに腹を立てて「ストレート投げんかい!ち◯こ付いとるんか!」と恫喝した変な奴もいたけどね

 

そいつには結局ぜ◯かが付いたけどな

 

勝負に怯んで4失点

 

初回、2回とスルスルと三者凡退で切り抜けた山井が落とし穴にはまったのが3回だった。二死一、三塁となって打席には2番筒香。昨日のことを思えば一発を警戒するのは分かるが、ここで逃げてもネクストにはソト、ロペスが並ぶのだから結局は同じこと。それでも山井は勝負に怯み、筒香には四球、続くソトにはカウント3-0から置きに行ったど真ん中を痛打されて先取点を許してしまう。さらにロペスにも打たれ、あれよあれよという間に4失点。これがそのまま決勝点となり、8連勝のあとの2連敗となってしまった。

山井ほどの大ベテランがこういう投球をしてしまうのだから、つくづく野球はおもしろい。食うや食わずの若手ならともかく、実績も経験も申し分ない、なんなら貯蓄も充分にあると思われる18年目の41歳が、打たれるのが怖くて臆病になってしまうのだ。もちろん投手コーチも今さらベンチで「山井よ、一発を怖がって歩かせても傷口を広げるだけだぞ!」なんて説教することもないだろうし、あそこで打たれようが打たれまいが契約更改の金額に大した影響を与えるわけでもあるまい。それでもやっぱり打たれるのは怖い。投手としての本能だろう。

 

山井の後を継いだ三ツ間は年俸1,000万円の無名投手。育成から支配下登録されて3年目、今年ダメならあるいはユニフォームを脱ぐことになるかもしれない、立場の危うい投手だ。その三ツ間が大先輩・山井の尻拭いとも言うべきイニング跨ぎをしてきっちりスコアボードに0をふたつ並べた。山井も裏で詫びの一つでも入れているに違いない。年俸も立場も関係ない、誰もが対等になれる真剣勝負だからこその光景だ。

アイドル界でもお笑い界でも、このところ「忖度」が重要なキーワードとなっている。くだらない。我々が何十年も飽きもせずにプロ野球に夢中になっていられるのは、そういう余計なものがグラウンドには無いからなのかもしれない。