ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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闘争心に火をつけろ

◯10-8(22勝25敗)

 

両先発の序盤KO、ド派手な3連発、それに対抗するかのようなホームランの応酬、そして信じられないようなミス……。

神宮球場という特殊な空間で起こり得る全ての要素をぶち込んだようなカオスな夏祭りは、ここ数年この球場で味わった悪夢の数々を振り払うような執念のリリーフ継投により、見事に逃げ切ってモノにした。昨年までなら確実にひっくり返されていたであろう試合を取れたのは、この球場にある種のトラウマを植え付けられている選手たち、そしてファンにとっても大きな自信になりそうだ。

おまけに神宮でのスウィープは6年ぶり。意外にも落合政権時には一度も無かったそうで、与田監督は就任一年目にして快挙を成し遂げた事になる。

 

むしろ高木政権の時にやってたのが意外すぎる

 

与田の闘争心がトラウマを振り払った

 

あまりに色々ありすぎて一体どこに焦点を当てれば良いのかさえ分からないような試合だったが、敢えてグラウンド外の出来事に目を向けると、やはり7回表、ビシエドの三振の際に与田がみせた闘争心は心に迫るものがあった。

この時点ではまだリードは僅か1点。残り3イニング残っている事を考えると、心配どころか嫌な予感しかしていなかったのは私だけではあるまい。流れも悪かった。伊藤康のまずい守備で1点差に詰め寄られた直後の攻撃を三者凡退に打ち取られ、さらにその裏には坂口の併殺崩しのスライディングに対してリクエストを要求するも失敗。神宮の魔物の影がすぐそこまで伸びてきているのを肌で感じ、脳裏には嫌な記憶が絶えずフラッシュバックしていた。

そんなタイミングで事件は起きた。近藤一樹の投じた外角の速球に球審がストライクアウトコールを下すと、温厚なビシエドが珍しく不服な態度を示したのだ。すると次の瞬間、ベンチにいた与田が怒気を帯びた表情で猛然と球審のもとに突進しようとしているではないか!

身を呈して必死に止めにかかる伊東コーチ。目を血走らせながら球審をグワッと睨む与田。指揮官のこんな闘争心あふれる姿が選手達に響かないわけがあるまい。

 

おそらく“ポーズ”だろう

 

結局、与田が何に対してあそこまで怒っていたのかは明らかにされていないが、VTRを見ればストライク判定自体はビシエドが感じるほど不可解なものではなかったのが分かる。と言うか、普通にストライクだと思う。それは与田も承知の上だろう。

そんな細かい事ではなく、4番打者が球審に対して不服を示した。それに対して指揮官がベンチで腕を組んで突っ立っていたらビシエドはどう感じるだろうか。あくまで想像だが、おそらく与田は伊東コーチが制止してくれる事も見据えた上で“ポーズ”として闘争心を表に出したのではないだろうか。チームを一つにするために。トラウマだらけのこの球場で何としても勝つために。

選手を守るためにここまで体を張る監督がいる。根性論は好きでないが、目の前の勝利に対する与田の並々ならぬ執念のようなものはチームにとって大きな武器だと言えるだろう。怪我人だらけの厳しい状況でも、与田がいる限りこのチームは大丈夫だ。あの闘争心あふれる姿を見て強くそう感じた。