ちうにちを考える

中日ドラゴンズ歴史研究家が中日の過去、現在、そして未来について持論を発表するブログです

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絶望を越えてゆけ

◯5-4(12勝11敗)

 

いよいよ始まる12連戦。その開始4時間ほど前に衝撃的なニュースが飛び込んできた。

“笠原祥太郎が体調不良で登板回避、代役は佐藤優”

当初は「体調不良」という言い回しから発熱かインフルエンザか、はたまた寝違えではないかと楽観的な予測が立っていたが、続報として入ってきたのは「不整脈」という極めて深刻な病名だった。

たちまち情報が駆け巡る。まだ病院に行けていないこと、診断結果を待ってからの抹消になること、そして過去には星野伸之、久古健太郎が発病し、いずれも引退に追い込まれていることーー。

藤嶋の血行障害が発覚した時と同じように、目の前が真っ白になった。何故いつもドラゴンズばかりこんな目に遭うのか、何故よりによって笠原なのか。やり場のない怒りに襲われる。しかも、笠原の場合はローテの軸として戦力的にも不可欠な存在だ。数時間後に迫った試合はもちろんのこと、12連戦をどう戦えばいいのかも、シーズンそのものの展望も見えなくなり、ドラゴンズファンの心は絶望に支配された。

 

選手たちは前を見て試合に臨んでいた

 

試合が始まると、絶望は更に大きくなる。スクランブル登板の佐藤が2死を取ってから自滅に近い形であっという間に3点を失い、手負いのドラゴンズはエース西を相手にいきなりビハインドを追う展開になった。この時点で、心の底から本気で「まだ勝てるぞ!」と信じていたファンがいたなら私は尊敬する。少なくとも私は「ゴールデンウィーク初日の旅先」という1年間でも最もテンションが上がりそうなシチュエーションにも関わらず、スマホの一球速報を確認して意気消沈し、心ここに在らずで死にそうな顔をして旅先の曇り空を見上げることしかできなかった。

しかし、こんなヘタレなファンとは違い、選手たちはしっかり前を見て試合に臨んでいた。佐藤がピンチを作りながらも3イニングを初回の3点だけでなんとか凌ぐと、4回には広島遠征で元気のなかった打線が久々に牙を剥く。平田が、京田が、大島がつないだチャンスに、4番ビシエドがこれぞ主砲と言うべき逆転スリーランで応える。チームが、ファンが息を吹き返し、目の前を覆っていた暗雲がたちまち晴れた思いがした。

 

皆で力を合わせて戦おう!

 

勝利監督インタビューで与田監督は、試合前に選手全員参加のミーティングを開いたことを明かした。笠原の状態を伝えた上で、“こういう時こそ皆で力を合わせて戦おう!”と一致団結を求めたのだという。厳しい現実から逃げずに真っ向から立ち向かう勇気と覚悟。私なんぞがいちファンの立場で絶望に苛まれてしまったのが恥ずかしいほどの当事者たちのポジティブな姿勢は、試合から伝わるチームのいい雰囲気そのままだ。

そして初回にいきなり3点を失った佐藤と、離脱した笠原に対する又吉の想いが全てを物語っていた。

佐藤が3イニング頑張って、何とか3点で止めてたので、中継ぎみんなで勝てば、笠原もすぐ戻ってくると思うので、それまではみんなで頑張ろうっていう気持ちでやってたんで、勝ててほんとに良かったです”

まさに皆で力を合わせ、大事な12連戦の頭を取った。